計280枚の展覧会チラシを選出して気づいたこと7点
2007年から2021年までの15年分にわたり、あくまで私の好みではありますが計280枚のすぐれたデザインの展覧会チラシ(首都圏限定)を選出し終わりました。
展覧会チラシデザインの魅力を再発見できたとともに、展覧会の思いが去来し愉しい作業となりました。
作業の過程で私なりに気づいた点や傾向、感想などを以下7点にまとめてみました。
①すぐれた展覧会=すぐれた展覧会チラシとは限らない
今回はあくまで「デザインの美しさ」を基準に選定し、展覧会の記憶に引きずられないようにしました。
どれとはいいませんが、展示内容はすばらしく、図録を購入して何度も振り返ったような展覧会でも、チラシデザインがいまいちだったものは選出していません。
逆もまたしかりで、どれとはいいませんが、展示はピンとこなくてもチラシデザインがすばらしかったものは選出しています。
また、後述の②の内容と重なりますが、超大型展で大ネタをメインビジュアルに据える場合、おそらくはデザイン上の制限があり、割と大人しいオーソドックスなつくりになる傾向があります。
そのため、誰もが記憶するその年の目玉の超大型展の展覧会チラシが外れている傾向があります。
②油彩作品、日本画はデザインに制限がある
油彩作品、日本画は基本的に角版で、部分的に切り抜くと作品の意図が伝わりにくくなるものがあるため、レイアウトの制限があると想像されます。
そのため、あまりデザインで遊ぶことができず、展覧会チラシとしては大人しめになってしまうのではないかと。
また、油彩作品は構成や色合いだけでなく、筆致も含めて楽しむものですが、展覧会チラシ(ポストカードも)では、よほどクロースアップにしないと筆致がよくわからず魅力が伝わりにくい。
その点、切り抜きして自由に配置できる立体作品は展覧会チラシに向いているといえます。
また、発色や線を印刷で表現しやすい写真作品や版画、グラフィックなども向いており、今回選出した290枚はそれらに偏りがちになっています。
③変わった判型・こだわりの紙を用いた展覧会チラシはそれだけで目をひく
展覧会チラシはA4が主流ですが、そのなかでもA2、斜めに切られているなどの変形、両観音開き、片観音開きなど、変わった判型をとったものはそれだけで印象に残るものです。
こういったものはコストがかかると思いますが、それでも制作してくれた、その心意気に感謝したいのです。
私としては、変形チラシはキャリアシートを使わないとスキャンできないので作業に手間がかかるという事務的な問題がありますけど、楽しいものを作ってくれるなら全然苦ではありません。
また、一般的な紙ではなく、クラフトっぽい紙やワックスペーパーなどを用いた展覧会チラシにも心惹かれます。
④展覧会チラシをスキャンしてデータ化すると、実物の魅力は半減
このブログで掲載している展覧会チラシの画像は、私がスキャナーで取り込んだものですので、特色(蛍光色など)の表現ができていません。
たとえば、「トーマス・デマンド」(東京都現代美術館、2012年上半期)の展覧会チラシは、現物はすばらしい発色なのですが、画像ではまったくわからずものすごく地味なチラシにしかみえません。これは何とかしたいと思うのですが・・・。
また、③でも述べたように、紙にこだわりがある展覧会チラシも、画像では手触りや質感をお伝えできないので、とても歯がゆく思います。
⑤作品そのものの魅力と展覧会チラシデザインの魅力の線引きの難しさ
今回は、なるべく「展覧会チラシデザイン」としてすぐれたものを選出したつもりですが、中には、そもそもメインビジュアルとして取り上げられている作品そのものの魅力にひかれて選出したものもあります。
作品のテイストによっては、作品をシンプルに提示するのが最適解、ということがあるので、あえてそのあたりの線引きはあいまいになりました。
⑥おぼろげながら見えてくるデザイントレンド
展覧会ごとに制作会社は異なるのでしょうが、それでもおぼろげながら時代ごとにデザインの傾向が見えてくるのが興味深かったです。蛍光オレンジがよく使われた時期があるとか、フォントのテイストとか、余白の取り方とか。
⑦蒐集の偏り
首都圏の展覧会をまんべんなくカバーしていたつもりでしたが、集計してみるとやはり自分が行きやすい施設の展覧会チラシが多く(世田谷文学館、練馬区立美術館など)、行きにくい施設の展覧会チラシが少ない(板橋区立美術館、大倉集古館など)という傾向がありました。
2007-2021年の展覧会チラシ280枚 リンク
【展覧会チラシ】2007年 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2008年 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2009年上半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2009年下半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2010年上半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2010年下半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2011年上半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2011年下半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2012年上半期 私的ベスト10
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【展覧会チラシ】2013年上半期 私的ベスト10
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【展覧会チラシ】2015年上半期 私的ベスト10
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【展覧会チラシ】2020年上半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2020年下半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2021年上半期 私的ベスト10
【展覧会チラシ】2021年下半期 私的ベスト10
今後の展望:判型、展覧会ジャンルなどの情報を追加したリストの作成
ポストカードはデータ管理をしていますが、展覧会チラシはリスト作成すらできていないので、おいおい時間を見つけて作業していこうと思います。
展覧会名、展覧会会場、ジャンル(日本/西洋、時代別など)、開催日時のほか、判型やデザインポイントなども記入できるリストにしようかなと構想中です。
こんなことをしても人生には何の意味もありませんが、楽しい作業になりそうなのでワクワクが止まりません。
次回は、2022年上半期の展覧会チラシ 私的ベスト10となりますが、チラシを集め終わる2022年5月前半に更新する予定です。
それまでは、ポストカードや切手のページを更新しようと思います。
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