【読書メモ】柳沢きみお『俺にはオレの唄がある』1巻のあらすじ

読書メモ

では柳沢きみお先生『俺にはオレの唄がある』の紹介に入っていきます。
柳沢きみお先生の基本情報は柳沢きみお先生について思うことをご覧ください。

「男のやすらぎ」を求めてさまよう中年男の話

『俺にはオレの唄がある』は「漫画アクション」にて1987年ごろに連載された作品。
タイトルに「唄」と入っていますが、これはたとえであり音楽に関する話ではありません。とあるサラリーマンがミッドライフ・クライシスに陥り、「男のやすらぎ」が何かを探し求めるという内容の漫画です。

このページでは1巻のあらすじをご紹介します。

『俺にはオレの唄がある』1巻のあらすじ

第1話 男の決断

35歳になる瀬上は、勤勉でスピード出世した一流企業のサラリーマンであり、「家族サービス」※1も怠らない優等生な男。しかし瀬上はそんな自分にうんざりし、2年前から給与と賞与をちょろまかして隠し金をつくって妻に内緒でボロアパートの一室を契約した。そこで何をやるかは決めていないが、まずは自分だけの小さな空間をつくりたいと思ったのだった。

※1 2022年の現在では「家族サービス」という言葉には違和感がありまくりですね。家族を思いやるのは当たり前で、「サービス」ではないでしょう……。当時(80年代後半)の男性はモーレツな働き方が求められており、男性は仕事、女性は家事と育児、とはっきり分けられていたのでこういう表現がまかり通っていました。

瀬上は会社が隔週週休二日制から完全週休二日制※2に移行したことを妻には知らせず、仕事だと嘘をついて隔週土曜日をボロアパートで独身時代のようにのんびりと過ごすことになる。会社と家の中間地点にあるため、早く帰れた日もアパートに立ち寄ることにした。

アパートで瀬上は惰眠を貪ったり銭湯に行ったり煮た鍋から直でインスタントラーメン食べたり(ここの描写はのちの『大市民』ぽい)と自由を満喫する。そのうちにアパートの隣に住む謎の中年男・野島と仲良くなっていく。

※2 80年代後半の時点では完全週休二日制の会社、隔週で週休二日制の会社、土曜日午前中も必ず働かなければならない会社と入り乱れた状態でした。今となっては土曜日も出社なんて信じられませんね。当時のサラリーマンはタフすぎます。

第2話 気分は独身

ある日山川専務※3と藤田企画室長※4に呼び出される瀬上。次期副社長の座を狙って現在山川専務と五十嵐専務が争っているが、山川専務派についてほしいといわれる。しかし瀬上はどちらの派閥につくつもりもなく、会議では「どちらの意見にも同意しかねる」と発言する。五十嵐専務派で瀬上のライバルである金子課長(以下、金子)からは派閥に入らないことを不審がられる。

※3 どうでもいいことですが、ページによって専務になったり常務になったりしています
※4 どうでもいいことですが、このあと出番なし

恋愛面では、瀬上は以前からOLのまなみと不倫しているが縁を切ろうとしている。そんななか、離婚した元夫に路上で絡まれていた友美という美女を助けて恋に落ちる。

第3話 生活の変化

秘密基地のアパートを得てからというもの、瀬上の残業や飲みの付き合いは極端に減っていく。

離婚した独身者だと嘘をつき友美とデートをとりつける。
一方不倫相手のまなみとはこれまで仲がバレないようにコソコソしていたが、捨て鉢になり日比谷公園で堂々とデートし金子に目撃される。

「男のやすらぎ」とは何かを隣人の野島に問うが、野島は「それは答えられない、自分で見つけなきゃ意味がないものだと思う」と言い、瀬上は答えが気になってしょうがない。

友美は元夫にまたしても路上で絡まれ、それを助けた瀬上は顔を負傷する。

第4話 男のやすらぎ

友美のマンションで顔の傷の手当てを受ける瀬上。友美にどんどんひかれていくが、友美には某大学の助教授※5をしている林という恋人がいると告げられ失望する。

※5 80年代後半当時は助教授という職階がありましたが、2007年4月以降は「准教授」

金子は五十嵐専務の毎晩の銀座通いのご相伴に倦んでいる。家庭を顧みない金子に妻は小言をいうのだった。

瀬上の変わりぶりを怪しんだ金子は興信所に依頼して瀬上の身辺調査をはじめる。

友美は思わせぶりに瀬上との食事の誘いに付き合う。

第5話 抱きたい女

思わせぶりに瀬上と会い続ける友美。瀬上はデートに着ていくパリッとした服を揃えるために出費を重ねていく。遊興資産がなくなってきた瀬上はこっそり貯金で株運用を始める。

ある日、公園で鉢合わせた金子は瀬上にこうこぼす。
「てめーだってわかってるんだろ/俺達があくせく働くのは/別に働くことがそんなに面白いわけじゃないことを/たいくつな家庭にいるよりは/仕事をしているほうがまだましだってだけよ/そして/生きている辛さをごまかすために/しゃかりきになってやってんだよ仕事をな」
出世の鬼にみえた金子も、実は自分と似たようなことを思っているんだなと瀬上は感じる。

これまでに二度遭遇した友美につきまとう前夫が、実は取引先の山倉という人間だったことを瀬上は知る。向こうは気づいていないようだがひやひやする。

現社長は山川専務を副社長につける意向があることを知った五十嵐専務派の金子は愕然とする。五十嵐専務の派手な銀座通いがネックになっているのではないかと考えるようになる。

瀬上に袖にされた不倫相手のまなみは金子にアプローチをかけるようになる。

第6話 二つの生き方

金子は五十嵐専務に対し派手な銀座通いを慎むように進言するも不興を買う。

瀬上は吉永営業部長※6より営業成績の落ち込みや残業時間の減少※7を指摘され、やる気を問われる。

※6 どうでもいいことですが、2巻では「酒井部長」に名前が変わってます。
※7 現代の感覚では営業成績の落ち込みはともかく、残業時間の減少(仕事の効率化/残業代削減)は歓迎されるべきことですが、当時は残業=偉いという感覚がまかりとおっていました。このシーンでは「先月はわずか18時間だ」と指摘していますが、十分多い。

興信所の身辺調査により瀬上の二重生活を知る金子。瀬上の急所を握ったと感じるが、なぜ瀬上がそんな生活をしているのかが信じられない。

第7話 男の正念場

ある昼休み、瀬上は吉永営業部長に鰻屋に誘われる。そこには斉木常務がいた。実は斉木常務と現社長とは「(山川専務でも五十嵐専務でもなく)斉木常務を次期副社長にする」話がすでについているという。瀬上は斉木常務派になってくれと本人から懇願され、迷った末に承諾する。

瀬上は友美に心を残しながら、ずるずると不倫相手のまなみとの関係も続いていく。

やりきれない日々だが、隣人の野島と酒を飲みながら人生について青臭く語り合うと気持ちが落ち着く。しかし野島は自分の正体を明かさない。

第8話 心の乱れ

金子は瀬上に「おまえの二重生活を知っている」と話すが、その情報をどう使うかは考え中だと打ち明ける。

瀬上の無断外泊が増え、瀬上と妻とはますます疎遠になっていく。
瀬上は無気力感に襲われ、仕事も恋愛も悪い方に悪い方に考えてしまう。
一方、ライバルの金子も連日の五十嵐専務の銀座通いのご相伴で体が疲れ切っていく。

第9話 吉か凶か?

瀬上は友美といいムードになるが、またしても前夫(で実は取引先の山倉)に邪魔され、とうとう山倉に自分の正体がばれる。また、友美の恋人だという林助教授ともマンションで鉢合わせになり、瀬上はなぜか引き下がってしまう。

第10話 悪の魅力

五十嵐専務の銀座通いは続き、金子は体が疲れ切っている。妻との不和も決定的になり、妻は実家に戻る。

取引先の山倉は友美の件で瀬上に圧力をかけてくる。

情緒不安定になった瀬上はアパートで座り込み涙が止まらなくなってしまう。そこに金子がやってきて、明日次期副社長が決まると話す。二人で飲み明かし奇妙な夜は過ぎていく

次ページでは2巻のあらすじをご紹介します。

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