【読書メモ】脇司『カタツムリ・ナメクジの愛し方』②雑感

読書メモ

引き続き脇司『カタツムリ・ナメクジの愛し方 日本の陸貝図鑑』についてです。
面白かった陸貝知識や、マイベスト陸貝、全体を通しての雑感などをご紹介します。

面白かった陸貝知識

個人的に面白かった陸貝知識を羅列します!

●生態・飼い方
・陸貝は乾燥は苦手だがびしゃびしゃし過ぎているのも苦手。貝から進化した生物だが肺呼吸なので、水たまりでは溺れてしまう
・室内で飼育する場合はタッパーがおすすめ
・カタツムリは紙をよく食べる
※2008年に東京国立近代美術館で開催された「ブラジル ボディ・ノスタルジア」という展覧会で、《飢えた手紙》というカタツムリに食べられた紙の作品が展示されていましたので、カタツムリがガンガン紙を食べる生き物だという知識はありましたが、考えてみれば元は木とはいえ、人工的な紙を食べるとは不思議なものです。
・カタツムリのえさとして、水にとけるので消化に良いという仮説から、著者はトイレットペーパー推し
・一方でナメクジは野菜、とくにきゅうりをよく食べる

●用語
・貝類が好きで研究している人を「貝屋」、とくにそのなかでも陸貝好きを「陸貝屋」と呼ぶ(この呼び方かっこいい)
・珍しいものを「珍貝」、ありふれたものを「雑貝・駄貝」と呼ぶ

●採集・標本
・殻の巻きが多いと標本にする際に肉抜き(陸貝をゆでた後に肉を抜くこと)が難しい
・陸貝採集では、「寝込みを襲う」(集団冬眠しているのを掘り起こす)ことが多い

●キセルガイ
・キセルガイはキセルに似た細長い殻をもつカタツムリ
・オオギセルは日本に住む世界最大級のキセルガイで、殻高約4-5cm
・シリオレギセルの成貝は高確率で殻頂(先っぽ)が折れているのでその名がついている。キセルガイはその他の種類も殻頂が欠けているものが多い
・ウスチャイロキセルガイモドキの殻は泥で汚れていることが多いが、彼らなりのカモフラージュか?
・ヒカリギセルは殻がぴかぴかに光るが、年を取ると殻皮がはげてくすんでしまう

●マイマイ
・ケマイマイという、殻に毛が生えている陸貝がいる。なぜ毛が生えているのかは不明。老成すると擦ったりして毛は抜け落ちる(人間みたいだね)
・シロマイマイは殻が真っ白で非常に目立つ
・ベッコウマイマイ科は肉食で、他の陸貝を襲って食べる
・イッシキマイマイは蛇に襲われても足を自切することで捕食を回避できる

●ナメクジ
・「ナメクジ」はナメクジ科の総称でもあり、個体で「ナメクジ」という名前のナメクジもいる
・ナメクジは寄生虫がいることが多いので、触ったらよく手を洗うこと。割りばしを使うと取りやすい
・マダラコウラナメクジは派手なヒョウ柄のナメクジで外来種
・アシヒダナメクジはヌメヌメしておらず、ザラついており固い

●ヤマタニシ
・アオミオカタニシは日本で唯一緑色の殻にみえるが、これは殻の色ではなく中の軟体部の色が透けている

マイベスト陸貝

115種のなかで、マイベスト陸貝はどれか考えてみました。ナメクジはやっぱり、見た目的に除外されるとして、カタツムリのなかで考えるとやはり、描いてみたクチベニマイマイ、リュウキュウギセルがすてきだなと思います。

リュウキュウギセルと同じく沖縄などの南西諸島でみられるリュウキュウヒダリマキマイマイもいいですね。「総合評価は日本の陸貝の中でも一番」とのことです。写真から伝わってくる殻のテクスチャが美しいです。

陸貝への愛にあふれた図鑑

全体を通して感じたのは、著者のなみなみならぬ陸貝への愛情です。
採集時の苦労話や、著者が想像する陸貝の習性などがユーモラスに語られ、読書中まったく飽きることがありません。
例えば珍貝のミヤマヒダリマキマイマイの寄生虫調査の話。「軟体部を取り出すため、このカッコいい殻を壊したことがある。残念ながら、本種からは寄生虫は出ず、破壊行為に見合った成果はなかった。いま思えば、殻と一緒に僕の心も砕かれたと思う」(P.68)

ビジュアル的にハンデがあるナメクジに対しての愛も相当なもので、世界初?となる、雌雄同体のナメクジが交尾している姿を文様にした「ナメクジ交尾手ぬぐい」をデザイン・監修されています。

読み終えたとき、だれもが近くの公園で俺も私も採集しようと思い立つのではないでしょうか。
写真をみないとピンとこないでしょうから、まずは書籍をお手にとることをおすすめします。お子様の自由研究にも大いに参考になる本だと思いますよ。

表紙のインパクトはやや弱いか

一点偉そうなことをいうと、この本、表紙の写真がちょっとインパクト弱いかなと思います。綺麗な写真ですが、なんとなく、よくあるロイヤリティフリー画像っぽい。。115種もの陸貝を掲載しているっていう売りが、表紙からはあまり伝わってこないです。裏表紙には12種のカタツムリが並べてあるんですが、これを表紙にしたほうがよかったかなと思います。

次回の読書メモは、パメラ・デ バレス『伝説のグルーピー』をご紹介します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました