【展覧会チラシ】2021年下半期 私的ベスト10

展覧会チラシ・目録

2021年下半期の展覧会チラシ蒐集状況

2021年下半期に集めた展覧会チラシは169枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。

「サーリネンとフィンランドの美しい建築」(パナソニック汐留美術館)


写真左:エリエル・サーリネン《ポホヨラ保険会社ビルディングの中央らせん階段》《1900年パリ万国博覧会フィンランド館、ラハティ市立博物館〈中面〉》
写真右:エリエル・サーリネン《バラのタペストリーのスケッチ》《ヴィトレスク、リンドグレン邸の北立面(左)、スタジオの断面が見えるリンドグレン邸の南妻面(右)》《ヴィトレスクのサーリネン邸のダイニングルーム》

フィンランドのモダニズムの原点を築いた建築家エリエル・サーリネンについて、1923年の渡米までのフィンランド時代にスポットをあて、図面や写真、家具や生活のデザインといった作品資料の展示を通して紹介する展覧会です。

金・紺・水色のとりあわせと、サーリネンが影響を受けたアール・ヌーヴォーを思わせるような曲線が美しい展覧会チラシです。

上の画像ではわかりにくいですが、二つ折りの形になっており、展覧会タイトルの上の部分を開くと開催概要が読めるようになっています。

「グローバル化時代の現代美術―“セタビ”のコレクションで楽しむ世界旅行」(世田谷美術館)


写真:フランチェスコ・クレメンテ《二つの大地》

大型作品を中心とした世田谷美術館のコレクション展です。自国を離れて異国でも創作を展開したロバート・ラウシェンバーグやデイヴィッド・ナッシュ、ジャン=ミシェル・バスキアなどを紹介するものです。

ワックスペーパーというのでしょうか、薄い紙を用いており、開くとA2になる展覧会チラシです。ふだんあまり目にすることの少ない現代美術の作家たちの大型作品にしぼった展示、という趣旨に合わせて、このような判型にしたのでしょうか。

メインビジュアルに選ばれているフランチェスコ・クレメンテ《二つの大地》を斜めに配置し、テキストや他の作品画像もそれに合わせて斜めにすることで、閉じたA4の際も、開いたA2の際もメリハリの効いた紙面になっています。

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「MOTコレクション展:Journals 日々、記す」「マーク・マンダース 保管と展示」(東京都現代美術館)


写真:蜷川実花《Light of》、マーク・マンダース《乾いた土の頭部》

「Journals 日々、記す」は東京都現代美術館のコレクション展です。コロナ禍や災害、世界規模で開催されてきたオリンピック、なにげない日常などを背景に日々制作された作品を、多様な作家たちによるアンソロジーのように構成した展覧会です。

「マーク・マンダース 保管と展示」は、2020年6月まで東京都現代美術館で開催していたマーク・マンダースの個展がコロナ禍により開催期間短縮となったことを受け、作品返却までの間、同展の出品作品の一部を異なる構成とした特別展示です。

マーク・マンダースは18歳のときに、自伝的な要素を含む小説執筆の試みを契機に得たという「建物としての自画像」という構想に沿って、以降30年以上にわたって一貫した制作を続けている、現代を代表するアーティストです。

B5ほどの大きさの展覧会チラシで、厚紙が使われています。
上の画像ではわかりにくいですが、「マーク・マンダース 保管と展示」の部分に切り取り線加工がなされていて、切り取れるようになっています。
角も丸く加工されており、凝った展覧会チラシです。

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「超人たちの人体」(日本科学未来館)


写真:ケレブ・ドレセル(アメリカ・競泳)、ウサイン・ボルト(ジャマイカ・陸上)、タチアナ・マクファーデン(アメリカ・パラ陸上)のイラストレーション

世界の頂点を極めたアスリートたちの人体の驚きの仕組みや美しさを解き明かし、私たちの体のさらなる可能性を肌で感じることができる展覧会です。

「人体の不思議」系の展覧会としては、2018年上半期 私的ベスト10で「人体―神秘への挑戦―」(国立科学博物館)を取り上げました。左半分と右半分でイラストを替える趣向は同様です。

イラストレーターがどなたかはわかりませんでしたが、生物実験におけるスケッチのような精緻なタッチが美しいです。

タイトルの白い部分のなかにも、筋肉や血管、内臓の一部のようなスケッチが見え、面白いなと思います。

背景の銀色も美しい発色です。

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「諸星大二郎展 異界への扉」(三鷹市美術ギャラリー)


鬼才・諸星大二郎のデビュー50周年を記念し、代表作の原画を中心に、作品世界に関わりの深い美術作品や歴史・民俗資料などをあわせて展示して、読む者を「異界」へと導く魅力の原点へと迫る展覧会です。

伝奇ものを連想させるフォントデザインが作風にぴったりです。

ファンならおなじみのキャラクターたちが大集合してうれしい限りです。
カオカオ様(短編「(遠い国から 追伸」カオカオ様が通る」に出てくる謎の巨人)の50周年ロゴが可愛らしい。

本展は全国各地を巡回するもので、開催施設によりテーマカラーが異なり、50周年ロゴやテキストの位置もずれていきます
私は首都圏限定で展覧会チラシを集めていますが、この展覧会に限っては全国のチラシを集めたかったです。

「目力展 見る/見られるの関係性」(板橋区立美術館)


国吉康雄《He’s the King》

板橋区立美術館のコレクションの中から、自画像、肖像画のみならず、象徴的に目を描いたもの、目の存在を感じさせるものなど「目力」のある作品を紹介する展覧会です。

閉じた状態ではA4、開くとA2になる展覧会チラシです。
表面は、とにかく目、目、目が強調されており、ちょっと電波系。でも柔らかいフォントなので圧迫感は感じず、面白いデザインです。上の画像ではわかりにくいのですが、全面に目の模様が敷かれています。

そして開いた裏面は、国吉康雄《He’s the King》が一面に!この作品の存在感は何なんでしょう。ずっと見ていたくなる不思議な絵です。皮肉っぽい、目のすわった鶏は何の王者をあらわしているのでしょう。

「ART-BOOK: 絵画性と複製性——MAU M&L貴重書コレクション × Lubokの試み」(武蔵野美術大学 美術館)


武蔵野美術大学 美術館のコレクションを紹介するとともに、ライプツィヒの出版社ルボーク・フェアラーグ(Lubok Verlag)の活動を紹介し、書物における「絵画性」の在りかを版画というメディウムの技術的、表現的側面から紐解く展覧会です。

私が入手したのは上記8枚ですが、公式サイトを見る限り他にもあるようです。

紙の質感、発色、レイアウト、どれをとってもすばらしい展覧会チラシです。
単純な四角形のようにみえますが、よく見ると螺旋階段のような広がりのある線になっています。

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「ピーター・シスの闇と夢」(練馬区立美術館)


写真:ピーター・シス《かべ 鉄のカーテンのむこうに育って》

絵本作家として知られるピーター・シスの個展です。
代表作の絵本原画やシスの創作活動の原点であるアニメーション作品を中心に、スケッチ、日記や資料を通して、シスの芸術を俯瞰します。

メインビジュアルに選ばれているのは《かべ 鉄のカーテンのむこうに育って》のなかの1枚。冷戦下のチェコで育ったシスの自伝的絵本です。
繊細な描線が印象的な作品の印象を崩さないタイトルデザインが美しいです。

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「松本力 SF とりはうたう ひみつを」(千葉市美術館)


写真:松本力《宇宙巣箱 設計図》

つくりかけラボは、千葉市美術館が定期的に行っている参加・体験型のアーティストプロジェクトで、「五感でたのしむ」「素材にふれる」「コミュニケーションがはじまる」いずれかのテーマに沿った内容になっています。

今回のテーマは「SF」で、松本力が注目する、人間の社会生活からみたスズメたちとの共生を取り上げ、人間の世界とスズメの世界が、それぞれどのような集合をもって重なり合っているかをさまざまなアプローチで探っていく内容となっています。

水色の紙を用いて、展覧会タイトルと巣の入り口部分は銀で着色されています。その色合いが非常に美しい。

おそらく作家本人が手掛けている方眼紙にひかれたようなタイトルデザインも目をひきます。

「柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年」(東京国立近代美術館)


写真左:《スリップウェア鶏文鉢》(イギリス、18世紀後半)
写真右:《羽広鉄瓶》(山形県、1934年頃)

民藝運動の父・柳宗悦の没後60年を記念し、各地の民藝のコレクションや資料総点数400点を通して、民藝とその内外に広がる社会、歴史や経済を浮かび上がらせる展覧会です。

ペラと二つ折りの2種類の展覧会チラシがありますが、表面のデザインは同じです。

線の組み合わせで構成されたタイトルデザインが美しい!
すっきりとした白の背景に、メインビジュアルがよく映えています。

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次回は、2007-2021年の展覧会チラシ290枚を選出しての雑感を書こうと思います。

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