【展覧会チラシ】2021年上半期 私的ベスト10

展覧会チラシ・目録

2021年上半期の展覧会チラシ蒐集状況

2021年上半期に集めた展覧会チラシは129枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。

「香りの器 高砂コレクション」(パナソニック汐留美術館)


日本最大の香料メーカー・高砂香料工業のコレクションから、「香り」にまつわる工芸品を展示する展覧会です。

ピンクを基調に、切手モチーフのデザインで香水瓶などがちりばめられています。制作時期が切手の価格の部分に模してあるのが面白いです。
清潔感のある上品なフォントが作品にあっており、とても美しいです。

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「電線絵画展 -小林清親から山口晃まで」(練馬区立美術館)


写真:小林清親《従箱根山中富嶽眺望》

明治初期から現代までの電線・電柱が果たした役割と、各時代で描かれた電線・電柱の意図を検証し、読み解くという展覧会です。

タイトルや開催期間を電線のようにつなげるアイディアが効いています。

メインビジュアルは小林清親《従箱根山中富嶽眺望》。描かれたのは明治13年(1880年)で、東海道を旅する人々の服装はまだ江戸時代といってもよさそうで、電柱と電線の存在とのギャップにびっくりします。日本における電信の歴史は意外と古く、明治に入ってすぐ東京~横浜間の電信線が竣工します。ですので、ほんの短い期間だと思いますが、この絵のような風景が見られることがあったのでしょう。

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「あやしい絵」(東京国立近代美術館)


写真左:橘小夢《安珍と清姫》
写真中央:甲斐庄楠音《横櫛》
写真右:上村松園《焔》

幕末から昭和初期に制作された芸術作品のうち、西洋からの刺激なども受けながら、退廃的、妖艶、グロテスク、エロティックといった「あやしい」魅力をもったものを紹介する展覧会です。

複数デザインがあり、私は3種類所有しています。他にもあるかもしれません。

タイトルデザインが流れるように美しく、その背景にはドラマティックに線が交錯しています。
それぞれの作品にあわせた色合いが、作品のあやしい魅力を高めています。

「与謝蕪村『ぎこちない』を芸術にした画家」(府中市美術館)


写真:与謝蕪村《涼しさに》《花すゝき》《採薬図》《火桶炭団を》《又平に》

江戸時代中期に活躍した俳人・画家の与謝蕪村は、晩年に近づくにつれ円熟していく自然の情景を描いた作品が人気ですが、この展覧会では蕪村作品の「ぎこちなさ」に着目。意図的なものか無意識なものなのか、素朴でゆるい、頼りない描線をもつ蕪村作品の魅力を解き明かすという趣旨です。

白を背景に蕪村の「ぎこちない」5つの画がちりばめられており、蛍光オレンジが全体を引き締めています。府中市美術館で「ゆるい日本画」を扱う際によく使われる色です。

二つ折りの形状になっており、裏には「『ぎこちない』蕪村の話」と称して、イラストレーター長田結花さんによる蕪村の魅力や特徴がまとめられており面白いです。

「国宝 鳥獣戯画のすべて」(東京国立博物館)


写真:鳥獣戯画 甲巻 乙巻 丙巻 丁巻

国宝「鳥獣戯画」甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を一挙公開、特に人気の甲巻は「動く歩道」に乗り鑑賞する形式ということで、話題を呼んだ展覧会です。

話題の展覧会のうえ、新型コロナウイルス感染症の影響で開催期間が短く、チケット争奪戦となったため私は残念ながら足を運ぶことはできませんでした。

鳥獣戯画の展覧会チラシを選ぶのは2007年 私的ベスト10「鳥獣戯画がやってきた」(サントリー美術館)2015年上半期 私的ベスト10「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」(東京国立博物館)に続く3回目です。

にぎにぎしく、カラフルに塗り分けられた鳥獣たちが楽しい仕上がりになっています。左下でカエルが補足説明しているのもかわいいです。

「イラストレーター 安西水丸」(世田谷文学館)


写真:安西水丸《白い鳥》

1970年代から小説、漫画、絵本、エッセイや広告など、多方面で活躍したイラストレーター安西水丸の仕事を紹介する展覧会です。

新型コロナウイルス感染症の影響で開催期間の変更があり、訂正シールが貼られています。訂正シールもチラシデザインにあわせたものになっていて、芸が細かいです。

よく見ると、開催概要の右側や、世田谷文学館の住所の左側が切れています。実はこのチラシは裏側が両観音開きになっており、開くと残りのテキストやANZAI MIZUMARUの柱があらわれるのです。「たくさんかきました」のイラストもかわいい。

紙もこだわりのものを使っているようで、発色もよくとても美しい展覧会チラシです。

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「蘭字―知られざる輸出茶ラベルの世界」(齋田記念館)


写真:《蘭字の貼られた輸入用茶箱》ほか

齋田記念館は世田谷区代田にある施設で、その母体である齋田家は、明治期に広大な茶園を造営して製茶業で栄えた旧家です。政府が茶の輸出を奨励したこともあり、明治期は日本各地で茶の生産・輸出が盛んになりました。商品価値を高めるべく、さまざまな趣向が凝らされた輸出用茶箱に貼るラベル=「蘭字」についての展覧会です。

展覧会チラシそのものが蘭字っぽいデザインになっています。全部で11の蘭字が載っており、おしゃれなものもあれば、ずいぶんトンチキなものもありますね。細かい部分までついじっくりと見てしまいます。

「ファッション イン ジャパン 1945-2020―流行と社会」(国立新美術館)


写真:田中千代 ニューキモノ(市松柄のキモノ)、森英恵 ホステス・ガウン「菊のパジャマ・ドレス」、Kansai Yamamoto トーキョーポップ、TSUMORI CHISATO 2006年秋冬コレクション《雪の日》より、Mame Kurogouchi《ジャケット、ニット、スカート、ソックス、バッグ、シューズ》、YUIMA NAKAZATO 2020年春夏コレクション《COSMOS》より

主に戦後の日本におけるユニークな装いの軌跡を、デザイナー(発信者)サイドと消費者(受容者)サイドの双方向から択え、時代ごとの主流メディアも参照しながら概観する展覧会です。

1950年~2020年までの5つのファッションが華やかに並べられています。
デヴィッド・ボウイに提供したことで有名な山本寛斎のトーキョーポップのジャンプスーツがちょうどチラシの中心にきていて、シンメトリーの美しさに心惹かれます。

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「田中良治『光るグラフィック展 0』」(クリエイションギャラリーG8)


グラフィックデザイナー田中良治氏の制作した「Tokyo TDC ウェブサイト」が第23回亀倉雄策賞を受賞したことを記念する展覧会です。

サイトにアクセスするとわかりますが、一定期間動作をしないとスクリーンセーバーのように現在時刻が表示されたりする面白い仕掛けがあります。

あえて中央ぞろえになっていない枠やバラバラのフォント、色合いが面白い展覧会チラシです。

「国宝 聖林寺十一面観音 – 三輪山信仰のみほとけ」(東京国立博物館)


写真:国宝 十一面観音菩薩立像(聖林寺)

奈良県桜井市の三輪山信仰のみほとけが約150年ぶりに集合するという展覧会です。
かつて大神寺にあった国宝 十一面観音菩薩立像(聖林寺蔵)、国宝 地蔵菩薩立像(法隆寺蔵)などの仏像と、仏教伝来以前の日本の自然信仰を示す三輪山禁足地の出土品などを展示。国宝 十一面観音菩薩立像が奈良県から出るのは初めてとなりました。

漆黒の背景のなかで、国宝 十一面観音菩薩立像の荘厳な美しさが際立っています。

次回は、2021年下半期の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。

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