青色が印象的に使われている幻想絵画のポストカードをピックアップしてみました。
【月明りの海】ジャン・デルヴィル《死せるオルフェウス》
ジャン・デルヴィル《死せるオルフェウス》, 1893年, 個人蔵
Bunkamuraザ・ミュージアムにて2005年に開催された「ベルギー象徴派展」で購入したポストカードです。
ギリシャ神話のオルフェウスを主題にした画です。
吟遊詩人オルフェウスは愛妻エウリディケの死後、トラキアの狂女たちの誘いを拒んだために彼女らに殺され、頭部をヘブロス河に投げ捨てられました。
しかしその頭部と竪琴は、歌を歌いながら河を流れていき、海を辿りレスボス島に流れ着き葬られます。そして彼の竪琴は天に挙げられ、琴座となりました。
ジャン・デルヴィルは、ベルギー象徴主義を代表する画家の一人です。
画によってタッチが異なり、この画ではだいぶ感傷的に描いているようです。もうちょっとすると安っぽくなりそうですが、ぎりぎりで幻想的な美しい雰囲気を醸し出しています。
月明りに照らされる青い海(たぶん河ではなくて海)と安らかなオルフェウスの表情が印象的な画です。
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【青緑色に染まる夜】ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク《黒鳥》
ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク《黒鳥》, 1895年, クレラー=ミュラー美術館
2017年にBunkamuraザ・ミュージアムで開催された「ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」で購入したポストカードです。
このウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク(名前、舌を嚙みそうに長い)もベルギー象徴主義に属する画家です。
名前にドが入っていることからも分かる通りフランスの貴族の家系で、普仏戦争時にベルギーに亡命したとのこと。
彼は風景画、特に夜の公園の景色を多く描きました。
この画も、月明りのなか独特の青緑色に染まる静謐な夜の公園を描いています。
黒鳥の瞳は水面に映る夜空の星の一つのようでとても幻想的です。
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【青い龍蛇】エドヴァルド・オクン《我々と戦争》
エドヴァルド・オクン《我々と戦争》, 1917-1923年, ワルシャワ国立美術館
原題は「My i wojna (The War and Us)」で、仮に《我々と戦争》と訳していますがニュアンスが違うようでしたらご指摘をお願いします。
エドヴァルド・オクンは1872年ポーランド生まれの画家・挿絵画家。
貴族の家に生まれ、ワルシャワ、ミュンヘン、ハンガリー、パリなどで研鑽を積んだのちローマで長年活動。1921年にワルシャワに戻り当地で芸術に関わるさまざまな要職に就きました。
一家族と、蝶のような耳を持つ青い龍蛇が流麗なアール・ヌーヴォー調で描かれています。美しい妻は臨月を迎えており、裸足の夫は目を伏せて不安そうにしています。老母は険しい目つきです。
この画が描かれた1917-1923年というと、ポーランド・ソビエト戦争があり、不穏な情勢だったころ。そんななか、新しく生まれる命を守ることの不安が描かれているのでしょうか。それとも、この画は何かの物語が下敷きになっており、別の意味が込められているのかもしれません。詳しいことはわかりませんでした。
(参考資料:https://culture.pl/en/artist/edward-okun)
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【暗い青空】オディロン・ルドン《神秘的な対話》
オディロン・ルドン《神秘的な対話》, 1896年, 岐阜県美術館
2020年から2021年にかけて三菱一号館美術館で開催された「1894 Visions ルドン、ロートレック展」にて購入したポストカードです。
岐阜県美術館の所蔵品です。【ポストカード】コレクション40 だれがかいたの?でも岐阜県美術館所蔵のルドンを紹介しました。日本でルドンに会いたければ三菱一号館美術館か岐阜県美術館に行くのがいいですね。
この《神秘的な対話》は、聖母マリアが、洗礼者ヨハネとなる子をみごもった聖エリザベトを訪問するという新約聖書の話が主題になっています。
しかし、幻想的な雰囲気やギリシャ風の建造物は聖書の時代の話には見えず、これは時代を限定しない神秘的な儀式を描いているのかもしれません。
青空が描かれているのに、全体の色合いからか、ピンクがかった雲の影響なのか、沈んだ暗い印象を受ける不思議な画です。
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次回はフェルナン・クノップフのポストカードの紹介をしようと思います。
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