【ポストカード】コレクション⑪ 18世紀後半 西洋

ポストカード

18世紀後半の西洋絵画のポストカードコレクションです。

ヴィジェ・ルブラン「ポリニャック公爵夫人」


Le Brun, Marie Élisabeth-Louise Vigée「ポリニャック公爵夫人」1782年, 油彩, ヴェルサイユ宮殿美術館

2011年に三菱一号館美術館で開催された「ヴィジェ・ルブラン展」で購入したポストカードです。

18世紀前半のポストカード紹介では、マリー・アントワネットの母マリア・テレジアが出てきましたが、またしても「ベルサイユのばら」の登場人物です。
作品内で一二を争う悪役キャラ、ポリニャック夫人。マリー・アントワネットのお気に入りであることをいいことに、浪費の限りを尽くし、一族の繁栄を謀ったキャラクターですね。

そういう前情報をいったんわきに置いて絵を見ると、大変やさしい親しみのもてる貴婦人という印象です。麦わらの帽子に生花が飾られ、ゆったりとしたドレスをまとった彼女は、健康で自然体な美しさをたたえています。
「ベルサイユのばら」では「天使のようなやさしい女性」「しっとりとした木かげを思わせるような」「ラベンダーの香りのするような」と語られていた彼女。とくに印象的なのはその瞳で、この絵では少しわかりにくいですが、珍しい紫がかった色だったとか。女優のエリザベス・テイラーのような瞳でしょうか。

この絵を描いた女流画家ヴィジェ・ルブランも「ベルサイユのばら」に登場します。作中では完全にモブ的なルックスでしたが、ヴィジェ・ルブランも自画像を見る限り大変な美人です。多くの素晴らしい肖像画を残しましたが、なかでもやはり女性の美を描くのが得意だったようです。

マリー=ガブリエル・カペ「自画像」


Capet, Marie-Gabrielle「自画像」, 1783年, 油彩, 国立西洋美術館

こちらも同じく「ヴィジェ・ルブラン展」で購入したポストカードで、ヴィジェ・ルブランと並んで高名な女流画家だったマリー=ガブリエル・カペの自画像です。

自信に満ち溢れ、溌剌としたカペはこのとき若干22歳。魅力的な表情もさることながら、青いサテンと袖のレース、薄いショールの質感など、「どう?すごいでしょ」感すら感じます。
女流画家として貴族社会の中でうまく立ち回るための、自己プロデュースも兼ねた作品だったのかもしれません。

まいまいつぶろコメント:マリー=ガブリエル・カペは紹介されていませんが、古今東西の女流画家がまとめられていてよみやすい本です。

アントン・ラファエル・メングス「マリア・ルイサ・デ・パルマ」

Mengs, Anton Rafael「マリア・ルイサ・デ・パルマ」, 1765年, 油彩, プラド美術館
2015年に三菱一号館美術館にて開催された「プラド美術館展 ― スペイン宮廷 美への情熱」で購入したポストカードです。

マリア・ルイサ・デ・パルマはこの時15歳。のちのスペイン王カルロス4世となるアストゥリアス公と結婚したばかりです。

全体的な印象としては「白い」。当時の流行により、髪は髪粉をたっぷりとつけて白くなっているようです。肌も、おしろいがたっぷりとぬられています。15歳のみずみずしさは塗りこまれてしまっているかのようです。
アップにするとまつげが白いのがわかりますが、彼女は(のちのゴヤの絵を見ると)ブルネットなので、これはおしろいでしょうか。それとも、長じるにつれて髪とまつ毛の色が濃くなっていったのでしょうか。

大きな瞳の描きこみの細かさがすばらしく、まあ美人かなという印象を受けますが、同じ1765年にメングスが描いた他の肖像画を見ると、どうもこの絵はだいぶ盛っているようです。あごをきゅっとひかせて、奇跡の角度で描いたんだろうと。年を取ってからの彼女の姿はゴヤの絵でいくつか見ることができますが、あまり美人とはいえません。

絵の下部は下書きの状態になっており、習作と思われます。

ユベール・ロベール「古代遺物の発見者たち」


Robert, Hubert「古代遺物の発見者たち」, 1765年, 油彩, ヴァランス美術館

2012年に国立西洋美術館で開催された「ユベール・ロベール-時間の庭」で購入したポストカードです。

ロベールは架空の遺跡をよく描きました。この絵も、実在する遺跡を描いたのではないようで、よく見るとちょっとちぐはぐな感じです。奥にはピラミッドのような建造物がありますが、手前の遺跡はヨーロッパ風、左に見える彫像はどこ風というのでしょうか、少なくともヨーロッパではなさそうです。

回廊の入り口には緑が侵食しはじめ、天井はひび割れ、風化しようとしていたところを発見されたという感じでしょうか。
「旦那、これですぜ」といった風の案内人と、発掘のパトロンであると思われる金持ち風の男のポーズがリアルですね。

独特の情緒と雰囲気があり、画家が愛してやまない「廃墟」というテーマをのびのびと描いている印象です。

ジャン=バティスト・グルーズ「壊れた甕」


Greuze, Jean-Baptiste「壊れた甕」, 1771年, 油彩, ルーヴル美術館

2015年に国立新美術館にて開催された「ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」で購入したポストカードです。

この絵のテーマが処女喪失というのはよく知られている話です。割れた甕、乱れたドレス、散った花びらがそれをにおわせています。

物語性、教訓性をもった風俗画を多く描いたグルーズは、当時高く評価されました。
しかしこの絵でのグルーズは、説教臭くならない、感傷により過ぎない、微妙なラインで描いているような気がします。
悲しみにくれる少女の姿にしてもよかったところを、ぼんやりとした、感情がみえない姿を描いているのは面白いです。ショックのあまり呆然としているようにも見えますし、いやいや、そもそもこの絵の主題は処女喪失ではないんだよというエクスキューズもギリギリできそうです。

この絵を肴に閲覧者たちがどんな意見を交わしたか?それも気になります。

ジョシュア・レノルズ「マスター・ヘア」


Reynolds, Joshua「マスター・ヘア」, 1788年, 油彩, ルーヴル美術館

2009年に国立新美術館にて開催された「ルーヴル美術館 美の宮殿の子どもたち」で購入したポストカードです。

この愛くるしい幼児は、女の子ではなく男の子。当時のイギリスの上流階級では、男の子がある年齢に達するまで、女の子の服を着せて育てるという風習がありました。

1788年頃に描かれた絵ですが、ずいぶん現代的にみえます。そして、ただただ愛らしい。幼児の白桃のようなふっくらとした頬と透き通る白い肌、頬にくっついた巻き毛など、思わず目を細めてしまいます。

次回は、19世紀の挿絵のポストカードをご紹介します。

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