17世紀後半の西洋絵画のポストカードコレクションです。
スルバラン「磔刑のキリストと画家」
Zurbarán, Francisco de「磔刑のキリストと画家」, 1650年, 油彩, プラド美術館
2018年に国立西洋美術館で開催された「プラド美術館 ベラスケスと絵画の栄光」にて購入したポストカードです。
写実的に磔刑のイエスと、それを仰ぎ見ている人物(聖ルカ?スルバラン自身?)が描かれています。手にはキャンバスが。
ヘンすぎるシチュエーションです。この絵の世界観はどうなっているんですか。
背景にはぼんやりとゴルゴダの丘陵らしきものがみえますが、極端に省略されています。イエスと俺、二人だけの世界みたいな・・・。
神と一対一で対峙するという覚悟や、自分の信仰の深さを表したのでしょうか。どうもよくわからない絵です。
|
アロンソ・カーノ「聖ベルナルドゥスと聖母」
Cano, Alonso「聖ベルナルドゥスと聖母」, 1657年, 油彩, プラド美術館
同じく「プラド美術館 ベラスケスと絵画の栄光」にて購入したポストカードです。
12世紀の神学者ベルナルドゥスが聖堂で聖母マリアの彫像に祈りを捧げたところ、なんと彫像が動いて乳をベルナルドゥスの口に注いだという奇跡を描いています。
この逸話は当時人気だったようで、他の作家も描いているそうです。
信仰心のない自分からすると、おかしみと気まずささえ感じる不思議な絵です。やたら写実的に描かれていますけど、こういった奇跡の場合、もう少しふわっと描いた方がしっくりくるような。同じ乳の噴出でも、ティントレットの「天の川の起源」なら、お話の世界と絵の雰囲気が合致しています(これはギリシャ神話だけど)。
「聖ベルナルドゥスと聖母」のちょっと前に描かれた「天使に支えられる死せるキリスト」(1646-1652年, プラド美術館)では、カーノは情緒的な天使を描いていますから、ふわっとした感じが描けないわけではない。
思うに、画家はベルナルドゥスの驚きを絵のメインに置きたかったのではないか。あと、この奇跡の聖母マリアがあくまで「彫像」であることをおさえて描くと、こういった写実的な描写にならざるを得なかったのではないかと思います。
|
ピーテル・フリス「冥府のオルフェウスとエウリュディケ」
Fris, Pieter「冥府のオルフェウスとエウリュディケ」, 1652年, 油彩, プラド美術館
同じく「プラド美術館 ベラスケスと絵画の栄光」にて購入したポストカードです。
おぞましくもおかしみがある絵です。題材はギリシア神話のオルフェウス。亡くなった妻エウリュディケーを取り戻すために冥府に入ったところを描いています。ご存じの通り、このあとは冥界の王ハーデースより「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返るな」といわれていたのに、あと少しというところで振り返ってしまったために妻を取り戻すことはかなわなかったという有名なシーンです。
1652年に描かれた絵なので、画家は当然ヒエロニムス・ボスの一連の作品をみているはず。舞台が冥府ということもあり、全体的に茫洋としていて、ボスのような細部の緻密さはありませんが、じっくりみていくとキャラクターが面白いです。
とくに、中央にいる、オルフェウスの竪琴を(勝手にとって?)鳴らしているおっさんと、巨大な頭を持つ空飛ぶ化け物・・・化け物に宙吊りにされている男のなすがまま感。化け物は図体のわりに翼が小さいんで、飛ぶのが結構大変な気がしますが、これが彼の仕事です。
展覧会では、この巨大な頭を持つ空飛ぶ化け物にフィーチャーした絵葉書もありました。人気なんでしょうね。
|
ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」
Murillo, Bartolomé Esteban Perez「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」, 1660年, 油彩, ロンドン・ナショナル・ギャラリー
2020年に国立西洋美術館と国立国際美術館に巡回した「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」にて購入したポストカードです。
ムリーリョ先生に幼い男の子を描かせたら右に出るものはありません。この絵では、幼いころの洗礼者ヨハネが描かれています。こちらに目線を合わせてくるヨハネに、羊がもたれかかっているのが可愛いですね。可愛い+可愛い。柔らかいカールした髪のやわらかさ、はじけるような肌を感じます。
宗教画ということになるのでしょうが、おそらく「単に可愛い男の子と羊が戯れているのを描かせたい!」という発注者の思いが強いのでは。普通、成人したヨハネを描くことが多いですよね。
|
ジャン=バティスト・サンテール「蝋燭の前の少女」
Santerre, Jean-Baptiste「蝋燭の前の少女」, 1700年, 油彩, プーシキン美術館
2013年に横浜美術館で開催された「プーシキン美術館展」にて購入したポストカードです。「プーシキン美術館展」はもともと2011年に開催が予定されていましたが、東日本大震災により延期されて2013年の開催となりました。
やわらかい蝋燭の光のもと、少女が何かを読んでいる絵です。少女の穏やかな表情から、悪いことが書かれているわけではなさそうです。親しい人からの手紙を読んでいるのでしょうか。右手を紙と紙の間に挟む姿がリアルです。
皆が寝静まった一日の終わりに、ひっそりと自分だけの愉しみにひたる、穏やかな様子が感じ取れる絵です。
|
やたらスペインに偏ってしまいました・・・。
次回は、18世紀前半の西洋絵画のポストカードをご紹介します。
コメント