【ポストカード】コレクション④ 11-14世紀 西洋

ポストカード

主にフランス、ドイツ旅行で入手した11-14世紀のポストカードを紹介します。

モン・サン=ミッシェル写本博物館所蔵「グレゴリウス9世教皇令集」


Décrétales de Grégoire IX, Grotesque, 13世紀, 写本, Musee des manuscrits du Mont Saint-Michel

「グレゴリウス9世教皇令集」の余白に描かれたグロテスクにクロースアップしたポストカードです。モン・サン=ミッシェル写本博物館所蔵。

読めないけど多分ムツカシイことが書かれていると思うのですが、このグロテスクはとぼけていていい感じですね。頭部はおっさん、体は魚と馬かしらん?当然、内容とは関係ない文様だと思います。
厳粛であるべき教会の書物に、なぜこのような滑稽で陽気なものが描かれているのか?カリカチュアのようにさまざまな罪を描き、善と悪を対比しているという説、聖職者たちが装飾に無関心だったため、芸術家・職人が自由に表現できたという説など所説あるようです。
現代の私にとっては、単純に「キモカワイイ」という一点で楽しんでいます。

※グロテスク
西洋の装飾モチーフ。異形で、滑稽ですらある人物と動植物などを組み合わせた文様のこと。
中世の装飾写本における、余白に描かれた半人半獣の装飾文様「ドロルリー」も広義ではグロテスクと呼ばれる。

(参考文献:ジャン・ヴェルドン著、池上俊一監修「【図解】笑いの中世史」,p57-62)

余談:西洋中世の装飾写本の集大成「内藤コレクション」
2019年から2020年にかけて、国立西洋美術館は3回に分けて、中毒学学者・医師の内藤裕史氏が集めた西洋中世の装飾写本を展示した「内藤コレクション展」を開催しました。
内藤コレクションの特徴は、彩飾写本の完本ではなく、一枚物(完本をばらして一枚にしたもの)であること、ページ全体の構成のなかでの装飾頭文字や紋様を楽しみたいという趣旨のもと、装飾部のみの切り取りなどをしてしないことです。
2016年に内藤氏はコレクションをまとめて国立西洋美術館に寄贈し、はじめてのお披露目となったわけですが、職人の息遣いや創意工夫が感じ取れる、すばらしいコレクションでした。
会場では、老いも若きも夢中になって顔を近づけて鑑賞していました。写本は情報量が多いので(私は当然読めないのですが、感じる情報の圧がすごい)、会場を後にするころには目が充血してぐったりしてしまいました。でも、当時の職人たちはもっと目を充血させて頑張って描いたのでしょうね。
ポストカードは今のところないようなので、ぜひ製作していただきたい。なんぼでも買いますよ。
国立西洋美術館は2022年の春まで館内施設整備のため休館中ですが、再オープンしましたら4回目、5回目の内藤コレクション展を期待します!

モン・サン=ミッシェル写本博物館所蔵「天文学写本」


Recueil de traités d’astronomie, L’Etoile polaire et l’astronome, 12世紀, 写本, Musee des manuscrits du Mont Saint-Michel

同じくモン・サン=ミッシェル写本博物館所蔵品です。天文学に関する論文のようです。天体観測のやり方などを説明していると思うのですが、詳細不明。右足が円からはみだしちゃってるのが可愛いですね。

モン・サン=ミッシェル写本博物館所蔵「旧約聖書 詩編118の解説」


S. Ambroise, Commentaire du Psaume 118, Initiale L, lettre ornée, 11世紀, 写本, Musee des manuscrits du Mont Saint-Michel

同じくモン・サン=ミッシェル写本博物館所蔵品です。旧約聖書 詩編118の解説だと思われます。Lの字の装飾文字にクロースアップしたポストカードです。
Lの先端部分にまきついた怪物たちの表情が情けなくていい感じ
実物は羊皮紙だったと思いますが、裏面の文字が透けていて、味わいが増しています。

フランス国立図書館所蔵「ヘブライ語旧約聖書」


Titelseite einer hebräischen bibelhandschrift, 13~14世紀, 写本, フランス国立図書館

ヘブライ語旧約聖書のタイトルページに描かれた図のようです。
ユダヤ教の象徴であるメノーラー(燭台)がドンと描かれていますが、脚の部分が面白くないですか?いまにもひょこひょこと歩き出しそうな。

ベルリン市立ミュージアム所蔵「誘惑」


Detail aus dem Zehdenicker Atlartuch, Versuchung, 1325年, 刺繍, ベルリン市立ミュージアム

こちらは詳細がわかりません。おそらく聖職者を悪魔が誘惑しているという図案の刺繍です。
悪魔がおっとりした印象というか、「お茶でもどう?」みたいな表情なので全然怖くないです。
刺繍は保存がとても難しいと想像されますが、綺麗に残っていますね。

次回は、15世紀の西洋のポストカードをご紹介します。

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