【展覧会チラシ】2016年上半期 私的ベスト10

展覧会チラシ・目録

2016年上半期の展覧会チラシ蒐集状況

2016年上半期に集めた展覧会チラシは133枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。

「若林奮 飛葉と振動」(府中市美術館)


写真:若林奮「多くの川を渡り 再び森の中へ」

タイトルの「飛葉と振動」は作家が最晩年の彫刻に名づけた言葉です。「鉄の彫刻家」といわれた若林奮の仕事を振り返るとともに、これまで十分に紹介されてこなかった「庭」をめぐる制作に光をあてた展覧会です。

作品にあわせた、ウェイトの細いカクカクしたフォントが面白く、蛍光の黄色の背景色が作品を引き立たせています。

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「祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ」(千代田区立日比谷図書文化館)


写真:サンハンちゃん

ブックデザインの第一人者である祖父江慎と、主宰するコズフィッシュのブックデザインを通して、フィジカルな「本」の魅力を探る展覧会です。

三半規管をモチーフにしたという「サンハンちゃん」の曲線が美しく、展覧会タイトルがその上にからみあっているようです。

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「国芳イズム—歌川国芳とその系脈」(練馬区立美術館)


写真左:歌川国芳「六様性国芳自慢 先負 文覚上人」
写真左:歌川国芳「子供遊土蔵之上棟」

幕末浮世絵の大スター絵師・歌川国芳。国芳作品と、国芳の奇抜さ斬新さを受け継ぐ多くの弟子達や風俗画を描く市井の絵師たちを、洋画家・悳俊彦のコレクションから紹介する展覧会です。

展覧会タイトル英文を左に固め、絵の迫力を引き立たせるようにしています。

特に左の「六様性国芳自慢 先負 文覚上人」の、のちの劇画につながる臨場感は、デザインによりより強調されており、はっとさせられます。

「ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏」(東京ステーションギャラリー)


写真:ジョルジョ・モランディ「静物」

熱烈な愛好者の多い静物画家・ジョルジョ・モランディの、日本では3度目、17年ぶりとなる展覧会です。

淡い色彩で描かれた作品に合わせてカラーが抽出され、落ち着いたクラフト感のある紙を用いて、慎ましい印象にまとめた展覧会チラシです。

テキスト部はあえて余白を少なく、キワキワに配置するデザインになっています。

「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」(Bunkamuraザ・ミュージアム)


写真左:歌川国貞「国貞 当世三十二相 よくうれ相」
写真右:歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」

世界に冠たる浮世絵コレクションで知られるボストン美術館より、幕末に絶大な人気を博した二人の天才浮世絵師、歌川国芳と歌川国貞の傑作が集結。タイトルのキャッチ―さもあいまって、話題になった展覧会です。

ペラの展覧会チラシで、両面とも表紙扱いになっています。「メール」「スカル」という現代風なキーワード抽出とパキッとした背景色で、目を引き付けるデザインです。

「REVALUE NIPPON PROJECT 中田英寿が出会った日本工芸」(パナソニック 汐留ミュージアム)

元サッカー日本代表の中田英寿による日本の伝統工芸を紹介するプロジェクト「REVALUE NIPPON PROJECT」により生まれた作品を紹介する展覧会です。

細かく罫線で区切られた中に、展覧会タイトルや作品、展示情報などが縦横に配置され、組み合わさっているデザインが、プロジェクト、チーム感を連想させます。

「生誕300年記念 若冲」(東京都美術館)


写真左:伊藤若冲《動植綵絵 老松白鶏図》《象と鯨図屏風》ほか
写真右:伊藤若冲《動植綵絵 群鶏図》ほか

伊藤若冲の生誕300年を記念して、初期から晩年までの代表作を紹介する展覧会です。若冲が京都・相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が東京で一堂に会すのは初となりました。

二つ折りの形状の展覧会チラシで、片側は《動植綵絵 老松白鶏図》がメイン、もう片側は《動植綵絵 群鶏図》がメインビジュアルになり、まわりにさまざまな作品がちりばめられています。

それぞれの画の一部から抽出された赤とオレンジのテーマカラーが、画を際立たせています。

「原安三郎コレクション 広重ビビッド」(サントリー美術館)


写真左:歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》
写真右:歌川広重《名所江戸百景 深川萬年橋》

日本財界の重鎮として活躍した日本化薬株式会社元会長・原安三郎氏の蒐集した浮世絵コレクションのうち、歌川広重最晩年の代表作である《名所江戸百景》《六十余州名所図会》を中心に紹介する展覧会です。

少しざらつきのある紙を使用して、版画を連想させるようにしています。

二つ折りの形状の展覧会チラシで、片側は《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》、もう片側は《名所江戸百景 深川萬年橋》を大きく掲載し、濃い朱色が全体を引き締めています

和文の展覧会タイトルが浮世絵特有の囲み文字の形で入っているのが面白いです。

「声ノマ 全身詩人 吉増剛造」(東京国立近代美術館)


写真:吉増剛造《声ノート》より「父の死」、「ただささやかな苞一枚で運ばれてゆくように」

日本を代表する詩人・吉増剛造の個展を美術館で実施するというユニークな試みです。

シアンとマゼンタで版のように配置された展覧会タイトルが面白いです。
本展覧会は「声」にフォーカスする内容で、チラシ表面で紹介されているのは作家が1970年頃から始めたメモ代わりの録音《声ノート》より「父の死」と詩編「ただささやかな苞一枚で運ばれてゆくように」の原稿です。

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「土木展」(21_21 Design Sight)


私たちの暮らしを支える土木をテーマに、プロジェクションやドローイング、観客参加型作品などさまざまなアプローチで紹介する展覧会です。

立ち入り禁止テープをベースにしてつくられたと思われる黄色と白のストライプに、土木シーンのピクトを入れ込んだと思われるにじみ感のあるタイトルデザインが映えています。

美術と関連が薄いように感じる「土木」の展覧会ですが、あえてチラシ表面には説明を入れないことで、「どんな展覧会何だろう?」と興味がわいてくるデザインです。

次回は、2016年下半期の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。

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