イギリスの企業の広告のポストカードをピックアップしてみました。
ラウントリーズ社のココア・チョコレート、シーガーズ社のエッグ・フリップ、キャドバリー社のココア、J.S.フライ&サンズ社のミルクチョコレートなどです。
イギリスのカード専門店で購入したものです。
Rowntree’s High Class Chocolates and Cocoa
Rowntree’s High Class Chocolates and Cocoa, Robert Opie Collection at the Museum of Advertising & Packaging, Gloucester
チョコレートとココアの広告ポスターです。
メイドが母親の部屋にココアを届けようとしていたところを、子どもたちにみつかってしまいました。子どもたちはボンネットの紐をひっぱってメイドを困らせています。まさに“Mother’s cocoa in danger”。愛らしいシーンです。
ラウントリーズ社は1862年にイングランド北部のヨークにて発足した製菓会社で、当初はココア、チョコレートなどが主な製品でした。しだいにフルーツグミなどを手掛けるようになり、1988年にネスレ社が買収。ラウントリーズの名前は現在も商品名として残っています。
ラウントリー一族はさまざまな人物を輩出しており、創業者の甥シーボーム・ラウントリーはラウントリーズ社経営の傍ら、ヨーク市内の貧困層の生活状態調査(1899年、1935年、1951年)を行ったことで知られています。
1924年には森永製菓との業務提携交渉のために来日したそうです。この時、業務提携が成立していたら、いまごろどんなお菓子が売られていたでしょう。
(参考資料:ラウントリーズ社の歴史-ネスレのラウントリーズページ、シーボーム・ラウントリー-ウィキペディア)
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Seagers Egg Flip
Seagers Egg Flip, 1951年, Robert Opie Collection at the Museum of Advertising & Packaging, Gloucester
シーガーズ社の「エッグ・フリップ」の広告ポスターです。
「健康と活力のために」というコピーと、色気たっぷりの女性。鮮やかな水色の背景が印象的です。
私は保持していないので掲載できませんが、他の「エッグ・フリップ」の広告ポスターを見ると、A mixture of wine & eggsと書かれており、商品名の通り卵が入っているそうです(!)。私はてっきり、この商品はリキュールかなにかで、自宅で各自が卵を入れてくださいね、というものだと思っていたのですが・・・。卵、ワインと砂糖を混ぜた飲み物で、栄養ドリンクのような立ち位置だったようです。
シーガー・エヴァンズ・アンド・カンパニーは1805年に発足したロンドンを拠点とする酒類製造会社。ジンの蒸留が専門で、「シーガー・ジン」が有名です。
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Cadbury’s cocoa
Cadbury’s cocoa
現在も売られているキャドバリー社のココアの広告です。
長毛種の白猫が蓄音機に耳を傾けています。ちょっとしかめっ面になっているのがかわいいです。
現在のキャドバリー社のココアのパッケージは紫ですが、ここでは鮮やかな赤が使われています。
キャドバリー社は1824年創業の老舗菓子・飲料メーカー。イギリス王室御用達企業でしたが、2010年にクラフトフーズが買収。現在はクラフトフーズの子会社となっています。
このA Record Of Successとは何を意味しているのでしょうか?
ポストカードの裏面には、以下のように書かれています。
In 1824, John Cadbury opened a grocery business at 93, Bull Street, Birmingham. Using a mortar and pestle, he prepared cocoa and drinking chocolate. This was the beginning of what was to become a worldwide business.
(1824年、ジョン・キャドバリーはバーミンガムのブル・ストリート93番地に食料品店を開業した。彼は乳鉢と乳棒を使って、ココアと飲料用チョコレートを製造したのだ。これが、後に世界的なビジネスとなる始まりだった。)
この猫が耳を傾けているのは、製造に成功した創業者からの喜びの声なのでしょうか?
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Cadbury’s: A Lesson from “Bournville” from the plantation to the Breakfast Table
Lesson about Cadbury’s”Bournville”, 1900年?
こちらもキャドバリー社の広告です。
さまざまな地域からの原材料が、キャドバリー社の工場を経て、製品となり世界各地の皆さんの朝食のテーブルに届けられているんですねー、と先生が説明しているところです。
“Bournville”(ボーンビル)は地名で、イギリス・バーミンガム南西に位置します。キャドバリー家が工場従業員のために振興した地域で、現在はイギリスで最も住みたい地域の一つとして知られています。
ポストカードの裏面には、以下のように書かれています。
By 1900 Cadbury Brothers Ltd were importing raw materials and exporting cocoa and chocolate all over the world. Understanding the trade at that time would have been as interesting then as it is today.
(キャドベリー・ブラザーズ社は1900年には原材料を輸入し、カカオとチョコレートを世界中に輸出していました。当時の貿易を理解することは、現在と同様に興味深いことであったろう。)
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J. S. Fry & Sons – Fry’s milk chocolate
J. S. Fry & Sons – Fry’s milk chocolate
J.S.フライ&サンズ社のミルクチョコレートの広告です。
泣き叫んでいた子どももJ.S.フライ&サンズ社のチョコレートをみりゃあ泣き止み喜びますよ、という趣向で、いちいち表情の下に説明を入れているのが可笑しい。
Desperation / Pacification / Expectation / Acclamation / Realization “It’s FRY’s”
(絶望/鎮静/期待/喝采/(完全に)認識「あっ、フライのチョコレートだ!」)
ポストカードの裏面には、以下のように書かれています。
Dr Joseph Fry lived in Bristol during the eighteenth century. He bought a chocolate making business, and from that day his name was associated with chocolate and cocoa. In 1919 the merger between Cadbury Brothers and J. S. Fry & Sons took place.
(18世紀ブリストルに住んでいたジョセフ・フライ博士はチョコレート製造業を買収し、彼の名前はチョコレートとカカオで有名になりました。しかし1919年、J.S.フライ&サンズ社はキャドベリー・ブラザーズ社に吸収合併されました。)
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次回は東ドイツの啓発ポスターのポストカードの紹介をしようと思います。
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