- 2019年上半期の展覧会チラシ蒐集状況
- 「ヒグチユウコ展 CIRCUS」(世田谷文学館)
- 「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)
- 「イメージコレクター・杉浦非水」(東京国立近代美術館)
- 「色彩の聖域 エルンスト・ハース ザ・クリエイション」(FUJIFILM SQUARE)
- 「写真の起源 英国」(東京都写真美術館)
- 「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」(東京国立近代美術館)
- 「春の江戸絵画まつり へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(府中市美術館)
- 「束芋 透明な歪み」(POLA MUSEUM ANNEX)
- 「塩田千春展 魂がふるえる」(森美術館)
- 「メスキータ」(東京ステーションギャラリー)
2019年上半期の展覧会チラシ蒐集状況
2019年上半期に集めた展覧会チラシは112枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS」(世田谷文学館)
写真:ヒグチユウコ《Circus》
猫をはじめとする動物や植物、少女、空想の生き物を細密に描き、自由な発想で見る人を魅了する画家ヒグチユウコの初となる大規模個展です。
テーマはサーカスということで、展覧会チラシもサーカスのテントのような形をしています。開催期間や料金などの情報はあえて裏面にまとめ、表面ではイラストが堪能できるようにしているのもよいです。
2021年10月現在でも閲覧できる公式ウェブサイトもぜひご覧ください。動きがあって楽しくかわいいサイトです。
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「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)
写真:伊藤若冲《紫陽花双鶏図》、長沢芦雪《白象黒牛図屏風》、曽我蕭白《雪山童子図》、歌川国芳《宮本武蔵の鯨退治》、狩野山雪《龍虎図屏風》
1970年に刊行された美術史家・辻惟雄による名著『奇想の系譜』に基づいた、江戸時代の「奇想の絵画」の決定版となる展覧会です。岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の代表作が一堂に会しました。
銀の背景の上に所狭しとうごめく奇想な奴ら。絵師の名前や展覧会タイトルもうねうねとしていてとても元気です。会場のエネルギーを感じさせるデザインになっています。
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「イメージコレクター・杉浦非水」(東京国立近代美術館)
日本のグラフィックデザインの創成期における重要人物・杉浦非水。三越のためのポスターや、数多く手がけた表紙デザインの仕事、原画やスケッチなど、杉浦非水の仕事が19年ぶりに一堂に会する展覧会です。
クラフト感のある紙に、(上の画像ではよく見えませんが)蛍光オレンジが効いています。非水のさまざまな仕事が、まるで昔のスクラップブックのように配置されているのが面白いです。
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「色彩の聖域 エルンスト・ハース ザ・クリエイション」(FUJIFILM SQUARE)
写真:エルンスト・ハース《火山、スルツェイ島、アイスランド》
1950年代にカラー写真の表現を切り拓き「色彩の魔術師」と呼ばれた写真家エルンスト・ハース。1971年に写真集として発表された最高傑作「ザ・クリエイション」より、厳選された21点をダイトランスファープリントという特殊なカラープリント技法で展示する個展です。
黒枠に白地というシンプルなあしらいのなかに、アイスランド・スルツェイ島における激しい噴火の様子を捕らえた作品がよく映えています。
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「写真の起源 英国」(東京都写真美術館)
写真:フアン・モンティソン伯爵(後のスペイン王フアン3世)《リージェンツ・パーク動物園のカバ、1852年》『写真クラブのメンバーによって制作された1855年の写真アルバム』より
英国における写真文化は、ヴィクトリア朝の貴族社会において花開きました。多くの日本未公開作品を手がかりに、これまで日本国内で知られていなかった英国の写真文化の多彩な広がりを紹介する展覧会です。
貴族社会を連想させるような上品な縁取りのなかにある作品は、動物園で眠るカバ。本当に気持ちよさそうですね。淡いベージュの背景も相まって、過ぎ去りし良き時代にタイムスリップするかのようです。
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「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」(東京国立近代美術館)
写真:福沢一郎《煽動者》
1930年代の日本にシュルレアリスムを紹介し、前衛美術運動のリーダーとして活躍した福沢一郎の多彩な画業を紹介する回顧展です。
メインビジュアルに選ばれた、この《煽動者》という作品そのものが魅力的です。
あえて絵を展示した状態の写真を使っているところも面白い。
作家のもつ独特のユーモアや皮肉をあらわすかのように、タイトルデザインが《煽動者》を取り囲んでいます。
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「春の江戸絵画まつり へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(府中市美術館)
写真:徳川家光《兎図》、仙厓義梵《豊干禅師・寒山拾得図屏風》ほか
府中市美術館のお家芸のヘンな日本画シリーズです。2013年上半期 私的ベスト10で紹介した「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」、2015年上半期 私的ベスト10で紹介した「春の江戸絵画まつり 動物絵画の250年」に続き、またしても蛍光オレンジを使っています(多分他にもある)。「春の江戸絵画まつり」シリーズはこの色なんですね。
いまや大人気の徳川家光《兎図》は、この展覧会で知名度が急激に上がっていったと記憶しています。
へそまがりという展覧会名称にならって、斜めに配置された作品やテキストが面白い展覧会チラシです。
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「束芋 透明な歪み」(POLA MUSEUM ANNEX)
写真:束芋《出会い》
国内外で高く評価され、インスタレーションや現代舞踊・伝統芸能とのコラボレーションなど、多彩な活動を展開する現代アーティスト・束芋の個展です。
キャンバス地のような面白い紙を使っています。
一見A4チラシのようですが、よく見ると上部が斜めに切り取られており、展覧会タイトルの通り「歪み」を連想させます。
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「塩田千春展 魂がふるえる」(森美術館)
写真:塩田千春《不確かな旅》
ベルリンを拠点に、グローバルに活躍する塩田千春の過去最大規模の個展です。
代表的なシリーズであり、メインビジュアルにもなっている、糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションのイメージが和文タイトルデザインに踏襲されています。英文タイトルデザインも「ふるえるかのように」少しズレています。
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「メスキータ」(東京ステーションギャラリー)
写真右から:メスキータ《ファンタジー:稲妻をみる二人》《ワシミミズク》《アルム》《ヤープ・イェスルン・デ・メスキータの肖像》《鹿》
日本ではほとんど名前が知られていないサミュエル・イェスルン・デ・メスキータの初の回顧展です。オランダで、画家・版画家として、また、装飾美術の分野でデザイナーとしても活躍したメスキータは、美術学校の教師として多くの学生を指導。中でもM. C. エッシャーは、メスキータから最も大きな影響を受けた画家です。
私の知る限り5種類の展覧会チラシがあり、メスキータの特徴である、鋭い切れ味の線描、大胆な構成、装飾性がはっきりと出ている5作品がメインビジュアルに選ばれています。右側のカタカナの展覧会タイトルが目をひきますが、全体的にメスキータの持ち味が生かされたすばらしいデザインだと思います。
知名度が高いとはいえない画家の展覧会チラシを、これだけ複数枚つくってくれた気概に感謝したいです。
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次回は、2019年下半期の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。
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