- 2013年上半期の展覧会チラシ蒐集状況
- 「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」(大倉集古館)
- 「エル・グレコ」(東京都美術館)
- 「エドワード・スタイケン写真展 モダン・エイジの光と影1923-1937」(世田谷美術館)
- 「JR展 世界はアートで変わっていく」(ワタリウム美術館)
- 「ナイン・ホール 佐藤雅晴」(川崎市市民ミュージアム)
- 「ラファエロ」(国立西洋美術館)
- 「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」(府中市美術館)
- 「カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-」(国立新美術館)
- 「日本写真の1968」(東京都写真美術館)
- 「フランシス・アリス」(東京都現代美術館)
2013年上半期の展覧会チラシ蒐集状況
2013年上半期に集めた展覧会チラシは137枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。
「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」(大倉集古館)
写真:前島宗祐「鶏頭小禽図」、横山大観「夜桜」、狩野常信「梅に尾長鳥図」、狩野探幽「松竹に鶴・柳に猿」、菊池契月「菊」、山口雪渓「十六羅漢図」、円山応挙「雁図」、竹内栖鳳「蹴合」
大倉集古館が所蔵する日本絵画を、西と東にわけて陳列する展覧会です。
タイトルデザインが面白いです。右側が少し伸ばされていて、漢字のなかに鳥たち(狩野常信の尾長鳥と円山応挙の雁)がうろちょろしていてかわいいです。
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「エル・グレコ」(東京都美術館)
写真左・中央:エル・グレコ《無原罪のお宿り》
写真右:エル・グレコ「聖マルティヌスと乞食」ほか
スペイン絵画の巨匠エル・グレコの大回顧展です。
エル・グレコは絵に圧があるので、それに負けないようにということか、黒地に黄色ではっきりとした感じにまとめています。
「TOKYO METROPOLITAN ART MUSEUM」の下の位置からめくれるようになっており、ひらくと他の主な出展作品や開催概要が出てくるしかけです。本展の目玉であり、高さ3メートルを超える祭壇画の最高傑作の一つ《無原罪のお宿り》の全体像を展覧会チラシでみせたいという狙いで、このような判型になっているのでしょう。
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「エドワード・スタイケン写真展 モダン・エイジの光と影1923-1937」(世田谷美術館)
写真:エドワード・スタイケン「女優グロリア・スワンソン」
アメリカの写真家エドワード・スタイケンの約200点に及ぶファッションとポートレートの仕事を一堂に紹介する展覧会です。
グロリア・スワンソンのまなざしが印象的な写真です。ヴェールを被っているのではなくて、カメラと女優の間にレースを幕のように張って撮影したのでしょうか。ちょうど目の細かい部分が左目にかかっていて、神秘的な効果をもたらしています。
写真の雰囲気を生かすように、テキスト色にはやや地味なスモーキーグリーンを採用しています。
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「JR展 世界はアートで変わっていく」(ワタリウム美術館)
街の壁や建物、列車や車などにさまざまな人物のポートレートを貼る「ペースティング」の表現で有名なフランス人ストリートアーティスト・JRの仕事を紹介する展覧会です。
展覧会チラシ表面には、いっさい情報を掲載していません。これが身元を明かすことを拒否するアーティストの意思なのか、デザイナーの意向なのかわかりませんが、逆に「何の展覧会だろう?」と気になってしまいます。
東日本大震災に深く心を揺さぶられたJRは、写真ブース「インサイドアウト」を東北に移し、住民が無料でその場でポートレートを撮れるようにして、のちに街中に展示する〈インサイドアウト計画〉を実行しました。このJRのポートレートの背景のドットは、「インサイドアウト」のブースで撮られたことを示しています。
「ナイン・ホール 佐藤雅晴」(川崎市市民ミュージアム)
撮影した日常の風景をパソコンのペンツールでトレースし、そのデータを「ロトスコープ」技法でアニメーションにした作品で有名な現代美術作家・佐藤雅晴の展覧会で、9つの作品を紹介するものです。
映写機のモチーフに作品のワンシーンが映し出されています。タイトル通り「穴」をモチーフとした作品のため、小さなドットが使われ、作品の一部やキーワードが見え隠れしており、中身が気になってしまうデザインです。
「ラファエロ」(国立西洋美術館)
写真:ラファエロ・サンツィオ「大公の聖母」
イタリアの全面協力のもと、20点を超えるラファエロ作品がイタリア、ルーブル美術館、プラド美術館などから集結した大型展覧会です。
こちらは速報チラシであり、一般チラシのほうは入手し損ねてしまいました。
ラファエロといえばだれもが知る画家で、メインビジュアルに選ばれているこの「大公の聖母」も一度は見たことのある絵でしょう。
こういった大ネタを展覧会チラシに使用すると、ともすれば平坦な印象にまとまってしまう恐れがあります。そんな難題にラファエロの「R」の字にくりぬくという大胆な手法で解答しています。ターコイスの発色が美しいです。
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「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」(府中市美術館)
写真:円山応挙「狗児図」
日本絵画を「かわいい」というキーワードでまとめ、大人気を博した展覧会です。これ以降、同じような趣向の展覧会が少なからずみられるようになりました。
(うちのプリンターの性能の限界で、上の写真ではうまく見えませんが、)目を引く蛍光オレンジの縁取りが、かわいらしい円山応挙の子犬を引き立たせています。
三つ折りの形状になっており、そのほか仙厓や歌川国芳の動物絵を掲載。気合が入った展覧会チラシです。
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「カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源-」(国立新美術館)
カリフォルニアにおける「ミッドセンチュリー・モダン」デザインをテーマにした展覧会です。
展示品のなかからオレンジ、黄色、グレー、黒をテーマカラーとして取り出しており、タイトルのデザインもあいまって開放的な明るいイメージにまとまっています。
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「日本写真の1968」(東京都写真美術館)
1968年は「写真100年-日本人による写真表現の歴史展」の開催や『PROVOKE』の創刊、学生運動の広がりとそれを撮影した写真群の隆盛など、写真の歴史において重要な年です。1968年を中心にして、1966~74年の写真の変容と世界への影響を紹介する展覧会です。
まず、紙が面白いです。学生運動で活動家がつくっていたアジビラのようなイメージなのでしょうか。背景色は、色の三原色になっています。
展覧会タイトル「日本写真の1968」が背景になっていて、ぱっと見どれが展覧会タイトルなのかわかりにくいのは、意図的なもののように感じます。
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「フランシス・アリス」(東京都現代美術館)
写真左:フランシス・アリス《川に着く前に橋を渡るな》
写真右:フランシス・アリス《トルネード》
地域の日常に潜む問題をとらえ、ときには作家が一人で、ときには数百人の参加者と協力してさまざまなプロジェクトを世界各地で行うメキシコ在住の現代アーティスト、フランシス・アリスの展覧会です。
二つ折りで、開くと縦長になる展覧会チラシです。
左の《川に着く前に橋を渡るな》は、ジブラルタル海峡によって隔てられたヨーロッパとアフリカという二つの大陸を、子どもたちが海を渡って列をつくることによってつなごうとするプロジェクトです。
右の《トルネード》は、アーティストが長年続けた、竜巻の中に突入し撮影を行うという行為を俯瞰してとらえたものです。
この全く異なる印象の写真の組み合わせが面白いです。ニュー・オーダーの「リパブリック」のジャケットを連想させました。
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次回は、2013年下半期の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。
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