2007年の展覧会チラシ蒐集状況
年別のデザインのすぐれた展覧会チラシを開催日付順にご紹介していきます。
2007年は展覧会チラシを集め始めた年で、枚数はわずかに15枚です。それも下半期に集中しています。
「鈴木理策 熊野、雪、桜」(東京都写真美術館)
写真:鈴木理策
写真家の故郷である熊野や、雪山、桜をモチーフにした展示で、チラシでは雪原の部分に、写真の良さを損ねないよう、うまくタイトルを配置しています。
縦書きと横書きを交互に使って単調さがでないようにしているようです。
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「ヴェネツィア絵画のきらめき」(Bunkamuraザ・ミュージアム)
絵画:ティツィアーノ・ヴェチェリオ「洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ」
ルネサンスから18世紀に至るまでのヴェネツィア絵画を紹介する展覧会です。
ステンドグラスのようなデザインで「きらめき感」を出しているのでしょうか。
実際の「洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ」の上部はこのような丸みがついていません。このような形にすることで、窓、扉を連想させ、ヴェネツィア絵画に誘っているのかも。
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「長新太展ナノヨ」(そごう美術館)
イラスト:左下「ムニャムニャゆきのバス」、右下「ゴムあたま ポンたろう」
2005年に亡くなった長新太の回顧展です。
ユーモラスでナンセンスな作風に合わせたデザインになっています。作品だけでなく、本人の人間的魅力にも迫る展示ということで、本人の写真も入っています。
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「フィラデルフィア美術館展」(東京都美術館)
絵画:上からジョージア・オキーフ「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」、アンリ・マティス「青いドレスの女」、ピエール=オーギュスト・ルノワール「大きな浴女」、パブロ・ピカソ「自画像」
フィラデルフィア美術館の名作を大量に展示した、2007年を代表する展覧会といえるでしょう。とにかく見どころがいっぱいあるよ、ということで、複数の絵画をちりばめ、タイポグラフィで展覧会の特徴をアピールしています。
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下部にちょろっと「あの『バーンズ展』の感動がよみがえる」と書かれているのが、お若い方はピンとこないと思います。
バーンズ展とは、1994年に国立西洋美術館で開催されたバーンズ財団が所蔵する美術作品コレクション展のことを指します。当時としては珍しい量の広告をバンバン打ち、普段展覧会に来ないような層にもアピールした結果、100万人の驚異的な入場者数を記録しました。その混雑ぶりは当時の芸術新潮にも取り上げられていました。
内容は20世紀絵画と印象派がメインで、このフィラデルフィア美術館展と重なります。
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「Space for your Future」(東京都現代美術館)
写真中央:タナカノリユキ「Portrait of ERIKA Sawajiri」
「アート・ファッション・建築・デザインなど、分野と領域を超えて活躍するアーティスト/クリエーターが提案する未来のコミュニケーション・スペース」がテーマの展覧会です。
チラシのメインビジュアルにもなっている沢尻エリカの百変化(CGなし、すべて実写)が壁一面に一望できる展示がわずかに記憶に残っています。
展覧会タイトルのタイポグラフィがスタイリッシュですね。
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「鳥獣戯画がやってきた」(サントリー美術館)
鳥獣人物戯画絵巻(甲巻)
これがサントリー美術館の開館(移転)記念特別展です。2015年に東京国立博物館で開催された「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」や、2021年の「国宝 鳥獣戯画のすべて」と比べると、わりと地味なデザインです。一方で、目立つ黄色を使用している割には品がある印象です。
鳥獣戯画自体は彩色されていないので、どのように味付けするか、検討しがいがありそうですね。
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「さびしさと向きあって」(佐倉市美術館)
何らかの痛みを起点として表現活動を展開した現代作家5名(石田徹也、菊池伶司、田畑あきら子、成瀬麻紀子、正木隆)の作品を紹介する展覧会です。
珍しい横型のチラシです。
石田徹也の作品が話題になっていた記憶がありますが、私はあまりピンとこず、チラシのメインビジュアルに選ばれた成瀬麻紀子の作品の儚い美しさに心惹かれました。
ひとりぼっちのうさぎがこちらに背を向けています。彼(彼女)はどんなさびしさを抱え、向き合っているのでしょうか。
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「目黒の新進作家―七人の作家、7つの表現」(目黒区美術館)
写真:屋代敏博《銭湯》シリーズより
石川直樹など七人の目黒区にゆかりのある新進作家を紹介する展覧会です。
メインビジュアルになっている屋代敏博《銭湯》シリーズが面白い。一つの風景を撮影しているかのように見えますが、実は片方が女湯、もう片方が男湯で写真を合体させています。
「文学の触覚」(東京都写真美術館)
写真:児玉幸子「モルフォタワー」
現代に活躍する文学作家とメディアアーティストのコラボレーション展です。
メインビジュアルになっている児玉幸子の「モルフォタワー」は、磁石に反応する液体を使った作品で、予想できない動きが面白く、延々とみてしまいました。正体不明な感じがチラシでもうまく表現できていると思います。
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「土田ヒロミのニッポン」(東京都写真美術館)
写真左:《まつり》シリーズより
写真右:《新・砂を数える》シリーズより
こちらはデザインというより、やはり写真そのものが持つ力が圧倒的だと思います。
「都市化・バブル・新世紀・まつり・ヒロシマに見る時代と人々。」と題して、土田ヒロミの代表作を紹介していく個展です。
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次回は、2008年の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。
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