私の切手コレクションのなかから、お気に入りのものを紹介します。
1970年代後半から1980年代前半にかけて発行された「日本近代美術シリーズ」32種のうち、私が保持しているものです。
「日本近代美術シリーズ」は大正から昭和にかけての美術作品を題材としており、誰もが知る名作もありますが、渋めのセレクションもみもの。いずれは全部集めたい!
切手好きな方からすると、日本近代美術シリーズなんて有名だしコンプリートじゃなくて歯抜けじゃんという印象だと思いますが、拙ブログは美術ポストカードを多く取り上げているので、その関連ということでご容赦くださいませ。
速水御舟《炎舞》(重要文化財)
1925年に描かれた速水御舟の代表作「炎舞」です。炎が天に向かって立ち昇り、妖しい光を放つ蛾が群がっています。背景は漆黒になっており炎を引き立たせています。
この画は、軽井沢の別荘で書かれたものだそうです。焚き火に群がる蛾や、採集した蛾の写生がもとになっているとのこと。
(参考資料:山種美術館ウェブサイト)
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萬鉄五郎《もたれて立つ人》
萬鉄五郎といえば、野外でねころぶわき毛美人《裸体美人》(東京国立近代美術館所蔵)のインパクトが強烈ですが、この作品はキュビスム風です。
こちらは自画像のようです。赤い身体に緑の髪の毛ってすごい取り合わせだ。
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安井曾太郎《金蓉》
東京国立近代美術館が所蔵する安井曾太郎の代表作のひとつ《金蓉》です。西洋風の椅子に腰かけるチャイナドレス姿の美しい女性が描かれています。
全体の姿や色合いも見事ですが、私が好きなのは顔つきです。どちらかというと男顔でほうれい線もくっきりと出ているのに、この凛とした美しさはどうでしょう。モデルとなった女性の内面まで伝わってくるかのようです。
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小林古径《阿弥陀堂》
東京国立博物館が所蔵する小林古径の《阿弥陀堂》です。
描かれているのは京都の平等院鳳凰堂。早朝と思われる薄明かりのなかで、人影はなく建物だけが静かに存在している、幻想的ともいえる画です。
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岡鹿之助《雪の発電所》
アーティゾン美術館が所蔵する岡鹿之助の《雪の発電所》です。
こちらは長野県の志賀高原西麓にある中部電力平穏第一発電所の水路式水力発電を描いたもので、現存する発電所とのこと。
岡鹿之助の作品が持つ独特の質感っていいですよね。みていると気持ちが落ち着くというか。かの薩摩治郎八は岡鹿之助に「君の絵を見ていると幸福になる」と言ったそうです。
(参考資料:アーティゾン美術館ウェブサイト)
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安田靫彦《飛鳥の春の額田王》
滋賀県立近代美術館が所蔵する安田靫彦の代表作《飛鳥の春の額田王》です。飛鳥の都の高台に立つ万葉歌人・額田王が描かれています。遠くにふんわりと見えるのは大和三山です。
私は2016年に東京国立近代美術館で開催された「安田鞆彦展」で現物を観まして、線の美しさ、色合いに大変驚きました。
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小出楢重《Nの家族》
こちらは洋画家・小出楢重が二科展に出品し樗牛賞を受けた《Nの家族》です。現在は大原美術館が所蔵しています。
書かれているのは画家自身と妻、子どもで、自身をやたら細長い顔にデフォルメしていますが、写真で見る限り小出楢重はそんなに特徴的な輪郭の持ち主ではありません。
重たい色使いが印象的な作品です。
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岸田劉生《麗子像》
こちらは説明不要ですね。岸田劉生が娘を描いた連作「麗子像」のひとつです。
消印が顔を横断しているのがちょっと嫌……。
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佐伯祐三《テラスの広告》
パリの街並みを多く描き、大変人気のある佐伯祐三の作品です。
街角のポスター、看板等の文字を荒々しく描くのが彼の特徴ですが、フランス語がわからない私と、フランス語が読める人とではどう印象が違うのかな?と思うことがあります。
この切手はきれいな満月印(消印が欠けず切手内に収まっている)がとれていてうれしいです。
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東郷青児《サルタンバンク》
サルタンバンクとは、定住せず各地を流浪する大道芸人のことを指します。
東郷青児といえば柔らかな線の女性像が多いですが、個人的にどうも苦手なので、このチョイスでよかったと思います……って上から目線。
東郷青児は作品よりも本人のルックスに目がいってしまいます。目がぱっちりとして鼻筋が通っており、俳優のようです。
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小林古径《髪》(重要文化財)
最後はおまけです。こちらは日本近代美術シリーズではなく、1969年発行の切手です。
永青文庫が所蔵する小林古径の《髪》で、髪をとかす姉妹らしい女性たちが描かれています。
髪の毛の描写が繊細で美しい。髪をとかされている左の女性の腕をクロスさせたポーズが何やら色っぽいですね。
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次回はポストカードに戻って、「だれがかいたの?」をテーマにご紹介します。
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