版画家・長谷川潔と萩原英雄の作品のポストカードを集めました。
長谷川潔《花束》
長谷川潔《花束》, 1926年, 横浜美術館
2011年に横浜美術館にて開催された「生誕120年記念 長谷川潔」で購入したポストカードです。
長谷川潔が横浜市出身であることをうけてか、横浜美術館では長谷川潔の版画・油彩画・素描・下絵などを多数所蔵しています。
長谷川潔は26歳の時にフランスへ渡り、さまざまな銅版画の技法を習熟しました。今回ご紹介するポストカードには含まれていませんが、特にメゾチント技法を復活させたことで有名です。戦争中も帰国することなく、89歳で没しました。
ドライポイントで花瓶と草花(おそらくアザミ、ヤグルマギク、ケシなど)が描かれています。
綿毛のバランスがとても可憐です。右下にはケサランパサラン状になった綿毛もいます。
緻密に写実的に描かれているのに、幻想的な雰囲気のある版画です。
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長谷川潔《一樹(ニレの木)》
長谷川潔《一樹(ニレの木)》, 1941年, 横浜美術館
ドライポイントで(おそらく冬の)楡の木が描かれています。落葉してとげとげしい姿ですが、自然の生命力を感じます。
この画については有名なエピソードがあります。パリ近郊で画題を探すために散歩をしていた長谷川に、この樹が「ボンジュール」と語りかけてきたというのです。そこで「ボンジュール」と返し、そうするといつも見かけていたこの樹が急にすばらしいものに思えてきたとのこと。
不思議な話です。ヨーロッパでは楡は良縁の象徴といわれていますが、作家と自然をつなぐ役割を果たしてくれたのかもしれません。
余談ですが、ミゲル・インドゥラインという往年のごつい顔の自転車選手が「レース中に木々が僕に語りかけてくる」と不思議発言をしたことがありました。この長谷川潔のエピソードを思い出し、「まあそういうこともあるかもわからんな」と思いました。
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長谷川潔《宝石と香水》
長谷川潔《宝石と香水》, 1946年, 京都国立近代美術館
エッチングで宝石、レース、香水瓶(バルブアトマイザー)、カメオ、草花、鳥のクロスステッチなどが描かれています。
構図がすばらしいですし、下に敷いたレースがぴらっとめくれている様子やガラスの質感などの表現が美しい。ずっと眺めていたくなる版画です。
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萩原英雄《ギリシャ神話「ナルシッソス」》
萩原英雄《ギリシャ神話「ナルシッソス」》, 1967年, 武蔵野市立吉祥寺美術館
武蔵野市立吉祥寺美術館の所蔵品です。ミュージアムショップでは、この「ギリシャ神話シリーズ」は以前1965年制作と思われていたが1967年が正だった、という旨の説明が付記されていました。
武蔵野市立吉祥寺美術館の一室が萩原英雄記念室になっており、常時展示を見ることができます。
萩原英雄は父親の仕事の関係で10代を朝鮮で過ごし、帰国後は東京美術学校などで研鑽を積みました。会社勤めや肺結核療養などを経て、戦後は油彩画・現代木版画などを精力的に描き、その多くは現在山梨県立美術館が所蔵しています。
この「ギリシャ神話シリーズ」は、萩原英雄が伝統的な浮世絵版画の技法に則り制作したものです。
この画は美青年ナルシッソス(ナルキッソス、ナルシス)を描いています。泉の水に映った自分の姿に恋焦がれて、ついには焦がれ死にして水仙の花と化したという例のアレです。
前面に水仙の群れを配置する構図も面白いですし、水面に映っているのが頭部だけ、というのが幻想的です。
このシリーズでは白を特徴的に使っていまして、ここではナルシッソスと水仙が白になっています。
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萩原英雄《ギリシャ神話「レダ」》
萩原英雄《ギリシャ神話「レダ」》, 1967年, 武蔵野市立吉祥寺美術館
こちらも「ギリシャ神話シリーズ」のなかの一枚です。ゼウスが白鳥に変身し、スパルタ王テュンダレオースの妻であるレダを誘惑したというエピソードを主題にしています。
他の絵画では、白鳥が頭や首をエロティックに寄り添わせているものが多いのですが、ここではレダの太ももの上にしっかりと乗っています。冷やっこそう。
壁紙とタペストリー(?)が3種類の文様を呈し、白いレダと白鳥を引き立たせています。
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次回は久しぶりに切手を取り上げます。飛行船ツェッペリンを題材にした切手の紹介をしようと思います。
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