点描作品のポストカードをご紹介します。
マクシミリアン・リュス、アンリ=エドモン・クロス、ジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックの4点です。
マクシミリアン・リュス《カマレの埠頭、フィニステール県》
マクシミリアン・リュス《カマレの埠頭、フィニステール県》, 1894年, 油彩, ミシェル・アンド・ドナルド・ダムール美術館
2015年に東京都美術館にて開催された「新印象派 = Neo-impressionism, from light to color : 光と色のドラマ」で購入したポストカードです。
リュスは1858年パリのモンパルナス生まれ。当初は版画と絵画両方を制作していたとのことです。
フィニステール県はフランスの北西に位置し、カマレ(カマレ=シュル=メール)はそのなかでも最西端の地域。寄港地、漁港として栄え、1880年代以降は避暑地となり、夏期には芸術家が集う場所となりました。この画もおそらく当地に出向いて描かれたものでしょう。
時刻は夕暮れで船が戻ってきたのでしょうか。船と人々は逆光でほぼシルエットのような描かれ方になっており、まだ光を保っている空と海の光とのコントラストがすばらしい。
夕暮れ時に、空や雲が奇妙な色で混ざり合い少し不穏な感じになる、いわゆる「逢魔が時」の瞬間を美しくとらえた作品です。
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アンリ=エドモン・クロス《農園、夕暮れ》
アンリ=エドモン・クロス《農園、夕暮れ》, 1893年, 油彩, 個人蔵
こちらも「新印象派~」で購入したポストカードです。
アンリ=エドモン・クロスは当初は写実的な画を描いていましたが、ポール・シニャック等の新印象派の画家たちの影響を受けて点描技法を使うようになりました。
この人、2回改名しています。本名はアンリ=エドモン・ドラクロワなのですが、ロマン派の画家ウジェーヌ・ドラクロワと区別させるために、十字架を意味する「クロワ」を短縮して「アンリ・クロス」と改名。その後、同じフランスの画家アンリ・クロと区別させるために、再び名前を変え「アンリ=エドモン・クロス」となりました。大変ですね。
本名が手塚なので、漫画の神様手塚治虫に遠慮してペンネームを島本とした島本和彦先生みたいな感じでしょうか。
こちらの画も夕暮れで、農婦が家路についているところのようです。全体の構図も安定感があって良いですが、この画でなによりも良いのはこのポワポワーンとしたヘンな樹です。
液体になった蛇みたいです。詳しいところはわかりませんでしたが、実際にこう見える樹があったのかもしれません。
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ジョルジュ・スーラ《サーカス》
ジョルジュ・スーラ《サーカス》, 1891年, 油彩, オルセー美術館
こちらはオルセー美術館のミュージアムショップで購入したと思われます。
点描という技法を確立した第一人者ジョルジュ・スーラの作品です。
点描画にしては珍しく(?)躍動感のある構図です。
サーカスの出しものだけでなく、観客をしっかりと描いているのがポイントかなと。
鈴木信太郎の《象と見物人》もそうですが、サーカスを題材にする場合、観客を画のなかに入れると映えますね。
割とスカスカな観客席……。すばらしい出しものなのに、友人と歓談してよそ見をしている紳士も。
点描はとにかくしんどい時間がかかる技法だと聞きます。もちろん、画全体のバランスをみてこの観客の数になっているのでしょうが、満員にすると描くの大変だからという事情も実はあったのかもしれません。
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ポール・シニャック《髪を結う女、作品227》
ポール・シニャック《髪を結う女、作品227》, 1892年, 油彩, 個人蔵
こちらも「新印象派~」で購入したポストカードです。
スーラに続く点描派の代表的な画家ポール・シニャックの作品です。
スーラは早世したため作品の数が少ないですが、シニャックは多くの作品を残しています。
この画はさらに「蝋画」という蜜蝋を使った特殊な技法が使われているらしく、ただでさえ手間がかかる点描にさらに手間をかけているそうです。
描かれているのは髪をシニョンにして鏡に向かう画家の恋人。(油をつけた?)両手の指先で髪を整えています。おくれ毛がふんわりしていて、点描なのに生々しい。
顔はあえてぼかしているようです。この方が想像力がわきたてられてよいですね。
そして壁……団扇が貼られています。ジャポニズムの画家は団扇を壁に貼りがち。モネ《ラ・ジャポネーズ》とかマネ《団扇と婦人(ニナ・ド・カリアスの肖像)》とかいろいろあります。日本人からするととても違和感がありますが、それもまたよし。
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次回はモイーズ・キスリングのポストカードの紹介をしようと思います。
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