【展覧会チラシ】2017年上半期 私的ベスト10

展覧会チラシ・目録

2017年上半期の展覧会チラシ蒐集状況

2017年上半期に集めた展覧会チラシは122枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。

「岩佐又兵衛と源氏絵―〈古典〉への挑戦」(出光美術館)


写真:岩佐又兵衛「源氏物語 野々宮図(部分)」

出光美術館の開館50周年記念展です。
京都・福井・江戸で活躍した岩佐又兵衛が生涯を通じて描き続けた源氏絵(『源氏物語』を題材にした絵画)と、同世代の画家の作品を紹介する展覧会です。

メインビジュアルは、光源氏が六条御息所を訪ねる「野々宮」の場面を描いており、堂々たる人物描写に繊細な草花の表現が印象的な作品です。
その雰囲気に沿うようにして、上品な色合いで展覧会タイトルと詳細情報が入っています。

印刷は非常に精緻で、原本の紙のシワやかすれなども確認することができます。

「並河靖之 七宝 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性」(東京都庭園美術館)


写真:並河靖之《藤草花文花瓶》

明治時代、七宝は輸出用美術工芸として人気を博しました。その七宝を多く手掛けた並河靖之の没後90年を記念する初の回顧展です。
大正期以降、忘れられた作家となっていた並河靖之ですが、この展覧会の数年前から「超絶技巧」など明治工芸への関心が再び高まり、開催に至ったものと思われます。

メインビジュアルには、《藤草花文花瓶》が選ばれています。片観音開きの判型になっており、観音を閉じた状態ですと《藤草花文花瓶》の細部と半身が、開くと《藤草花文花瓶》の全体像が見られるという趣向です。
やきものは全体の形をみて愉しみ、また細部を見て愉しむものですが、その作業を展覧会チラシで再現している、遊び心を感じるつくりです。

「パロディ、二重の声 ――日本の一九七〇年代前後左右」(東京ステーションギャラリー)


写真:横尾忠則「POPでTOPを!」

1960年代中頃からはじまり、70年代に入るとテレビや雑誌などを通じて社会的に流行した「パロディ」表現に焦点をあてた展覧会です。

メインビジュアルに選ばれているのは横尾忠則「POPでTOPを!」。元ネタはもちろん、有名な亀倉雄策の東京五輪ポスターです。
この絵のイメージにあわせて、展覧会タイトルや各種情報が細かく四角で区切られ、まるで額縁のように配置されているのが面白いです。全体的にちょっとかすれさせているのもにくいです。

「ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」(Bunkamuraザ・ミュージアム)


写真左:河鍋暁斎《地獄太夫と一休》《百鬼夜行図屏風》
写真右:河鍋暁斎《鬼を蹴り上げる鍾馗》

英国在住のイスラエル・ゴールドマン氏の包括的な河鍋暁斎コレクションを紹介する展覧会です。

展覧会チラシが複数存在し、左は裏面が両観音開きになっています。右は二つ折りの形状で、開くと縦長で《鬼を蹴り上げる鍾馗》の全体があらわれます。

躍動感のあるタイトルデザインに暁斎の描いた妖しい奴らがピョンコピョンコしていて、とても楽しい展覧会チラシです。上の画像では見えませんが、左のチラシは背景全面に丸い模様が入っています。

大胆かつ繊細、奇抜でユーモラスな作風で常に人気がある暁斎ですが、このころ若い世代を中心にますます注目が集まり、チラシをはじめとした広告はかなり気合が入っていたと記憶しています。
公式ウェブサイトもギミックが面白く、2021年10月現在でも閲覧可能ですので、気になる方はのぞいてみることをおすすめします。「ページトップに戻る」ボタンが《地獄太夫と一休》の骸骨なのがかわいすぎる。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

反骨の画家河鍋暁斎 (とんぼの本) [ 狩野博幸 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2021/11/3時点)

「19世紀パリ時間旅行 失われた街を求めて」(練馬区立美術館)


写真:アドルフ・マルシアル・ポテモン《ロラン=プラン=ガージュ通り(袋小路)》(『いにしえのパリ』より)

フランス文学者の鹿島茂氏による『芸術新潮』の人気連載「失われたパリの復元」をもとに、19世紀パリの全体像に迫る展覧会です。

左側のあしらいが、タイムスリップをイメージさせて面白いです。

展覧会タイトルのうち「パリ」のみ縦向き、数字の「19」は横向きになっているのがこだわりを感じます。不思議と読みづらさはありません。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

パリ時間旅行 (中公文庫) [ 鹿島茂 ]
価格:814円(税込、送料無料) (2021/11/3時点)

「ブリューゲル『バベルの塔』展」(東京都美術館)


写真:ピーテル・ブリューゲル1世《バベルの塔》

24年ぶりにブリューゲルの名作《バベルの塔》(ボイマンス美術館)が来日するという超大型展です。実物のほか、東京藝術大学COI拠点の特別協力により、原寸を約300%拡大した複製画や3DCG動画も展示するなど、さまざまなアプローチで《バベルの塔》の魅力を解き明かしていました。

複数の展覧会チラシが存在しますが、私は1種類しか入手することができませんでした。

普通、《バベルの塔》の全体像を提示するものと思いますが、この展覧会チラシでは一部分が切り取られています。特に説明はありませんが、ボイマンス美術館版の《バベルの塔》は59.9 × 74.6 cmなので、これは実寸大ということだと思います。細部の表現が見ものなので、このやり方は(老眼が進んでいる諸兄にもおそらく?)うれしい。もっとも、他のチラシでは全体像をうつしているのですが。

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」(東京ステーションギャラリー)


写真:アドルフ・ヴェルフリ《アリバイ》

アウトサイダー・アート/アール・ブリュットの代表画家アドルフ・ヴェルフリの、日本における初めての大規模な個展です。
精神科病院にて一心不乱に描き続け、生涯に描いた数は25,000ページといわれる画家の初期から晩年までの74点を厳選。作品のもつ圧倒的なエネルギーと異様さが話題になり、会場はかなり混んでいたと記憶しています。

ヴェルフリは独特の筆記体を作品に用いますが、それにあわせてか、ふにゃふにゃした、大きさもアンバランスな不安定なフォントが使われ、独特の雰囲気を醸し出すことに成功しています。

「佐藤直樹個展『秘境の東京、そこで生えている』」(アーツ千代田 3331)


写真:佐藤直樹《そこで生えている。》

アートディレクター・デザイナーの佐藤直樹が木炭で身近な植物を描くシリーズを紹介する展覧会です。巨大なパノラマ作品や新作、2013年に東京電機大学跡の地下で「そこで生えている。」のタイトルで最初に描かれた壁画などが展示されました。

パノラマで描かれた作品のもつうねりや勢いをあらわすかのように、斜めに切り取られたデザインが効いています。

「生誕110年記念 漆の画家 太齋春夫」(練馬区立美術館)


写真:太齋春夫「貴婦人象」

漆でフィルムをつくる「漆膜」の技法で特許を取得し、絵画にも活用して多彩な制作を行ったものの、若くして戦没し、知る人の少なかった作家・太齋春夫の仕事を紹介する展覧会です。

表紙の作品は「漆塗アルマイトモザイク」という手法で制作されたものです。上の画像ではわかりにくいですが、展覧会チラシではその照りの美しさを、厚めのPP加工を施した紙で表現しているのが面白いです。ぜひ手に取って感触を確かめていただきたい展覧会チラシです。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

うるしの科学 [ 小川俊夫 ]
価格:3080円(税込、送料無料) (2021/11/3時点)

「ジャコメッティ」(国立新美術館)


写真:アルベルト・ジャコメッティ《歩く男Ⅰ》

身体を線のように長く引き伸ばした、特徴ある彫刻で有名なジャコメッティの大回顧展です。

作品の特徴を活かすために、二つ折りになっており、広げると《歩く男Ⅰ》の全体像があらわれる仕掛けになっています。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【中古】ジャコメッティ展
価格:2000円(税込、送料別) (2021/11/3時点)

次回は、2017年下半期の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました