2018年下半期の展覧会チラシ蒐集状況
2018年下半期に集めた展覧会チラシは86枚です。以下は開催日付順で、番号は順位ではありません。
「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」(練馬区立美術館)
写真左:月岡芳年《芳年武者旡類 源牛若丸 熊坂長範》
写真右:月岡芳年《皇国二十四功 佐藤四郎兵衛忠信》
“最後の浮世絵師”月岡芳年の展覧会です。
幕末は武者絵を中心に、美人画、戯画を発表、明治維新以降は“血みどろ絵”“無惨絵”といわれるリアルな戦闘画で人口に膾炙しました。その後も作品の幅を広げ、新聞挿絵や西南戦争に取材した作品、歴史画・風俗画などで、人気浮世絵師への階段を一気に駆け上りました。
大きめにとられたタイトルデザイン「芳年」の躍動感がすばらしく、インパクトがあります。
クラフト感のある紙が使われており、発色も非常に美しいです。
上のほかにもいくつかバージョンがあるようです。すべて集めきれなかったのが悔しい。
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「1968年 激動の時代の芸術」(千葉市美術館)
写真:赤瀬川原平《お座敷》ほか
世界中で近代的な価値がゆらぎはじめ、各地で騒乱が頻発した激動の年「1968年」。それから半世紀が経過した2018年の視点から、この時代の芸術状況を、現代美術を中心に回顧する展覧会です。
うちのプリンターの性能の限界で、上の画像ではよくわかりませんが、蛍光オレンジ、蛍光ピンクの発色がすばらしい展覧会チラシです。グラデーションの印象も相まって、1968年当時の熱気をあらわしているようです。
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「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙」(サントリー美術館)
写真:重要文化財《如意輪観音坐像》
真言宗醍醐派の総本山として、常に歴史の表舞台で重要な役割を果たしてきた名刹・醍醐寺。
国宝・重要文化財に指定された仏像や仏画を中心に、濃密な密教美術を紹介し、さらに普段は公開されない貴重な史料・書跡を通じて、平安時代から近世にいたる醍醐寺の変遷をたどる展覧会です。
黒の背景に、重要文化財《如意輪観音坐像》が荘厳に浮かび上がる美しいデザインです。
セリフが目立つ独特のタイトルフォントが面白く、意外と《如意輪観音坐像》のイメージにあっているように思います。
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「横山華山」(東京ステーションギャラリー)
写真:横山華山《祇園祭礼図巻》
江戸時代後期の京都で活躍した人気絵師・横山華山の初めての回顧展です。横山華山は多くの流派の画法を身につけつつも、諸画派に属さず、自由な画風と筆遣いで人気を博しました。
今や知る人ぞ知る絵師となっていることを受けてか、「見ればわかる」と身も蓋もないコピーがちょっと面白いです。
代表作《祇園祭礼図巻》を切り取りながら、斜めの黄色のラインと、右上がりに見えるタイトルデザインが絶妙なバランスをとっています。
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「ピエール・ボナール」(国立新美術館)
写真:ピエール・ボナール《猫と女性 あるいは 餌をねだる猫》
19世紀末のフランスでナビ派の一員として出発し、鮮烈な色彩の絵画を多数生み出した画家ピエール・ボナール。オルセー美術館の豊富なコレクションを中心にした大回顧展です。
タイトルの色が、映画に重なった部分は黒、白地では赤になっており、落ち着かない不思議な雰囲気で、なぜか印象に残ります。
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「マルセル・デュシャンと日本美術」(東京国立博物館)
写真:マルセル・デュシャン《泉》、伝千利休作《竹一重切花入 銘 園城寺》
マルセル・デュシャンは、伝統的な西洋芸術の価値観を大きく揺るがし、20世紀の美術に衝撃的な影響を与えた作家です。展覧会は2部構成となっており、第1部「デュシャン 人と作品」ではデュシャンの代表作を、第2部「デュシャンの向こうに日本がみえる。」では、もともと西洋とは異なった社会環境のなかで作られた日本の美術の意味や、価値観を浮かび上がらせることによって、日本の美の楽しみ方を新たに提案します。
Question「花入と便器の共通点は?」が効いています。一見、まったく関連がないような2点にどのような共通点があるのか、気になってしまう展覧会チラシです。
背景の朱色寄りのオレンジもヴィヴィットで美しいです。
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「カタストロフと美術のちから」(森美術館)
写真:オノ・ヨーコ《色を加えるペインティング(難民船)》
震災やテロ、戦争、環境破壊、金融危機など世界各地で絶えず発生するカタストロフ(大惨事)に対し、アートがどのように向き合い、再生を遂げるためにどのような役割を果たすことができるのかを問いかける展覧会です。
余白がないギチギチとしたタイトルデザインが印象的な展覧会チラシです。カタストロフのとてつもなさや、それに対抗するアーティストの意志などをあらわしているのでしょう。
内部の説明文も、同様につまったデザインで組まれています。
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「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」(東京都庭園美術館)
写真:ルイ・ブーケ《黒いアフリカ》、ポール・ポワレ《ロープ》ほか
アール・デコと、同時期に盛んとなった非ヨーロッパ圏の文化・美術がアール・デコの美意識と造形にどのような影響を与えたのかを解き明かす展覧会です。
黄色の背景に、金の箔が美しく映え、アフリカ・アジアの文化に影響を受けた8つの作品がちりばめられています。派手なデザインではないのに、ダイナミックな印象を受ける展覧会チラシです。
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「フィリップス・コレクション」(三菱一号館美術館)
写真左:パブロ・ピカソ≪緑の帽子をかぶった女≫、フィンセント・ファン・ゴッホ≪道路工夫≫、クロード・モネ≪緑ヴェトゥイユへの道≫
写真右:アンリ・マティス≪サン=ミシェル河岸のアトリエ≫、オーギュスト・ロダン《姉と弟》、フランシスコ・デ・ゴヤ≪聖ペテロの悔恨≫
世界有数の近代美術コレクションであるワシントンのフィリップス・コレクションの中から、アングル、コロー、ドラクロワ、クールベ、マネ、ドガ、セザンヌ、モネ、ゴーガン、ボナール、クレー、ピカソ、ブラックらの秀作およそ75点を紹介する展覧会です。
超有名画家の1文字を伏せて出展作にするというアイデアで一点突破した展覧会チラシです。コレクションの範囲が幅広いのでテーマをつくりにくかったのではないかと思います。たまにはこういうのもよいですよね。
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「吉村芳生 超絶技巧を超えて」(東京ステーションギャラリー)
写真:吉村芳生《新聞と自画像2018.10.8毎日新聞》
現代アート界の異色の画家・吉村芳生の全貌を62件600点以上の作品により3部構成で紹介する展覧会です。
超絶リアルで見る者の度肝を抜く凄みを感じる吉村芳生作品は、2007年の「六本木クロッシング2007」でも話題になりましたが、この展覧会でさらに知名度を上げたように思います。
メインビジュアルに選ばれたのは、鉛筆・色鉛筆を駆使して描かれた《新聞と自画像》シリーズのなかの1点。不敵な笑みを浮かべる自画像の部分にクロースアップしているのが印象的です。
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次回は、2019年上半期の展覧会チラシ 私的ベスト10をご紹介します。
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